2018/01/14

クエン酸回路(TCAサイクル)

クエン酸回路はミトコンドリアのマトリクスに存在するシステムです。
クエン酸回路は、アセチルCaAが組み込まれることによって反応が始まります。
そのためには、まず解糖系で生成したピルビン酸がアセチルCaAにならないといけません。

ピルビン酸からアセチルCaAの生成には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体という酵素と、チアミンピロリン酸(TPP)、リポアミド、CoA、FAD、NADという補酵素が必要になります。

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体は、
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)
ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(E2)
ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(E3)
という3つの酵素からなり、反応は5段階に分かれています。

5段階の過程は、
ピルビン酸
ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸
S-アセチルジヒドロリポイルリシン
アセチルCaA
となります。
これだけ見ると3回の反応ですが、これにFADとNADの酸化還元反応が補助的に入ります。

ピルビン酸からヒドロキシエチルチアミンピロリン酸の生成には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)とチアミンピロリン酸(TPP)が必要になります。
ピルビン酸(C3H4O3)にチアミンピロリン酸(C12H19N4O7P2S)が付き、CO2を放出し、ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸が出来ます。
C3H4O3+C12H19N4O7P2S→C2H4O~TPP+CO2

ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸(C2H4O~TPP)からS-アセチルジヒドロリポイルリシンの生成には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)とリポアミド(C8H15NOS2)が必要になります。
E1を触媒として、ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸(C2H4O~TPP)にリポアミド(C8H15NOS2)が付き、TPPが放出され、S-アセチルジヒドロリポイルリシン(C10H19NO2S2)が出来ます。
C2H4O~TPP + C8H15NOS2→C10H19NO2S2 + TPP
このときのリポアミドが、wikiではα-リポ酸(C8H14O2S2)となっていて混乱する人もいると思いますが注意してください。

S-アセチルジヒドロリポイルリシンからアセチルCaAの生成には、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(E2)とCoAが必要になります。
E2を触媒として、S-アセチルジヒドロリポイルリシン(C10H19NO2S2)にCoA(C21H36N7O16P3S)が付き、ジヒドロリポアミド(C8H17NOS2)が放出され、アセチルCaA(C31H55N8O18P3S3)が出来ます。
C10H19NO2S2+C21H36N7O16P3S→C31H55N8O18P3S3+C8H17NOS2

ジヒドロリポアミドからリポアミドの生成には、ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(E3)とFADが必要になります。
E3を触媒として、ジヒドロリポアミド(C8H17NOS2)がFADによる酸化反応を受けてリポアミド(C8H15NOS2)が出来ます。
C8H17NOS2+FAD→C8H15NOS2+FADH2

酸化反応により出来た還元型FADはNADの酸化反応を受けてまた酸化型FADに戻ります。
FADH2+NAD→FAD+NAD+H+

これでやっと、ピルビン酸からアセチルCoAが出来ました。
ここからクエン酸回路が回り始めます。
反応は以下になります。

アセチルCoA
クエン酸
シスアコニット酸
イソクエン酸
α-ケトグルタル酸
スクシニルCoA
コハク酸
フマル酸
リンゴ酸
オキサロ酢酸

アセチルCoAからクエン酸の生成にクエン酸シンターゼという酵素とオキサロ酢酸と水が必要になります。
クエン酸シンターゼを触媒として、アセチルCaA(C31H55N8O18P3S3)にオキサロ酢酸(C4H4O5)と水が付き、CoA(C21H36N7O16P3S)を放出してクエン酸(C6H8O7)が出来ます。
C31H55N8O18P3S3+C4H4O5+H2O→
C6H8O7+C21H36N7O16P3S

クエン酸からシスアコニット酸の生成には、アコニターゼという酵素が必要になります。
アコニターゼを触媒として、クエン酸(C6H8O7)から水が抜けてシスアコニット酸(C6H6O6)が出来ます。
C6H8O7→C6H6O6+H2O

シスアコニット酸からイソクエン酸の生成には、同じくアコニターゼと水が必要になります。
シスアコニット酸(C6H6O6)に水が付きイソクエン酸(C6H8O7)が出来ます。
分子式的にはクエン酸と同じになります。
C6H6O6+H2O→C6H8O7

イソクエン酸からα-ケトグルタル酸の生成には、イソクエン酸デヒドロゲナーゼという酵素とNADが必要になります。
α-ケトグルタル酸を触媒とし、イソクエン酸(C6H8O7)はNADの酸化反応を受けCO2を放出してα-ケトグルタル酸(C5H6O5)が出来ます。
C6H8O7+NAD→C5H6O5+CO2+NADH2

α-ケトグルタル酸からスクシニルCoAの生成には、オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体という酵素と、チアミンピロリン酸(TPP)、リポアミド、CoA、FAD、NADという補酵素が必要になります。
ピルビン酸からアセチルCoAと同じ反応になり、スクシニルCoA(C25H40N7O19P3S)とCO2とNADH2を放出します。
C5H6O5+C21H36N7O16P3S→C25H40N7O19P3S+CO2+H2

スクシニルCoAからコハク酸の生成には、スクシニルCoAシンターゼとGDPとリン酸が必要になります。
スクシニルCoA(C25H40N7O19P3S)にGDP(C10H15N5O11P2)とリン酸(H3PO4)が付き、CoA(C21H36N7O16P3S)とGTP(C10H16N5O14P3)を放出してコハク酸(C4H6O4)が出来ます。
C25H40N7O19P3S+C10H15N5O11P2+H3PO4→C4H6O4+C21H36N7O16P3S+C10H16N5O14P3

コハク酸からフマル酸の生成には、コハク酸デヒドロゲナーゼという酵素とFADが必要になります。コハク酸(C4H6O4)がFADによる酸化を受けてフマル酸(C4H4O4)が出来ます。
C4H6O4+FAD→C4H4O4+FADH2

フマル酸からリンゴ酸の生成には、フマラーゼという酵素と水が必要になります。
フマル酸(C4H4O4)に水が付加されリンゴ酸(C4H6O5)が出来ます。
C4H4O4+H2O→C4H6O5

リンゴ酸からオキサロ酢酸の生成には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼという酵素とNADが必要になります。
リンゴ酸(C4H6O5)がNADによる酸化を受けてオキサロ酢酸(C4H4O5)が出来ます。
C4H6O5+NAD→C4H4O5+NADH+H+

以上がクエン酸回路の流れになります。
クエン酸回路の反応をまとめると、
アセチルCoA+CoA+3NAD+FAD+GDP+リン酸+2H2O→
2CO2+2CoA+3NADH+3H++FADH2+GTP
となります。

補足
クエン酸回路の維持
クエン酸回路の中間代謝物が減少すると、アセチルCoAが回路に入るために必要なオキサロ酢酸の濃度も低下し、回路が維持出来なくなります。
そのためピルビン酸からオキサロ酢酸を生成する経路があります。
ピルビン酸からオキサロ酢酸を生成するには、ピルビン酸カルボキシラーゼという酵素とATPとCO2が必要になります。
ピルビン酸カルボキシラーゼを触媒とし、ピルビン酸(C3H4O3)にATP(C10H16N5O13P3)とCO2が反応します。
このとき、ATPが加水分解され(ADPC10H15N5O10P2)とリン酸(H3PO4)が放出してオキサロ酢酸(C4H4O5)が出来ます。
C3H4O3+C10H16N5O13P3+CO2+H2O→C4H4O5+C10H15N5O10P2+H3PO4






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