2018/01/07

マグネシウム

マグネシウム(Mg2+)は、ミネラルの一つで骨や歯の形成に必要な元素です。
そんな中、生化学の教科書には神経や筋肉の興奮性を低下させると書かれている事も多いのですが、その書き方ゆえ多くの人がマグネシウム自体にその能力があると勘違いしてしまいます。
確かに間違いではないのですが、かなり簡略化した書き方であり、実際はあくまでも補助因子として働いているに過ぎません。
例えば…
筋肉の興奮性を低下させる。
本来、筋肉が弛緩するには筋小胞体にCa2+が回収されなくてはならないのですが、この回収時にATPが必要になります。
そのATPが枯渇すると筋肉は弛緩しづらくなり、興奮性が低下しません。
そのため、筋肉の興奮性を低下させるためにまずATPが必要になります。
Mg2+はそのATPを生成する過程で必要になるのです。
よって、直接的に筋肉の興奮性を低下させるのではなく、間接的に関係して来ます。
まずグルコースからATPを生成するのですが、ATPを生成するにあたりATPが必要になるという少し矛盾した感じになります。
これは分かりやすく言うと、少量のATPを使ってその後多量のATPを回収するといった感じです。
そのATPを使う際にMg2+が必要になります。

グルコース+ATP→グルコース6リン酸+ADP

グルコースがATPと反応してP(リン酸基)とくっ付くことでADPを押し出します。(求核攻撃)
その反応を触媒するのがヘキソキナーゼという酵素で、ADPを押し出しやすくするための補助因子としてMg2+が必要になるのです。

補足的な細かい説明をすると以下になります。
キナーゼとはドナー分子(ここでいうATP)から基質(ここでいうグルコース)にリン酸基を転移させる酵素のことを言います。(リン酸化)
基質とは酵素と結合して酵素が働く場所となる物質のことです。
キナーゼ系はMg2+を必要とします。
なぜなら、ヒドロキシ期もリン酸基も負電荷を帯びているため本来は反発しあうのですが、Mg2+の配位結合がリン酸基の負電荷を抑えることでリン原子が求核攻撃を受けやすくしているのです。(リン酸基が取れやすくなって転移しやすくなるってこと。)
ほとんどのところでヘキソキナーゼの基質をATPと省略して書かれていますが、実際は、ヘキソキナーゼの基質の一つはATP4-とMg2+が配意結合したMgatp2-となっているのです。

以上が、筋肉の興奮を低下させるときのMg2+利用の過程ですが、他にも、脂肪を分解させる時や様々な過程でATPが必要になってきます。
ですので、ATPが登場する過程では常にMg2+が必要となって来ます。
これが、Mg2+が生体の機能維持に不可欠と言われる理由です。

まとめとして車に例えると、車にとってタイヤは必要です。
でも、そのタイヤを留めるためのビスも必要です。
Mg2+はまさにそのビス的な存在です。
確かに必ず必要なものですが、だからといって100個も200個も用意しても車の性能は上がらない。
必要な分だけあれば良い。
ですので、Mg2+もたくさん摂れば良いという成分ではなく、不足しないように補っていれば特に問題がないという程度の成分なのです。
Mg2+にばかり注目してるヒマがあるなら、他にやるべきことに目を向けた方が身体の性能は上がるでしょう。

補足
マグネシウムが豆乳を豆腐に固化ささるように、高濃度のMg2+はタンパク質を固化する性質があるもあるので注意が必要です。





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