2014/06/28

自己免疫疾患

自己免疫疾患に有効な治療の一つに、ステロイドによる治療がある。

ステロイドが良くないという話は一般の人にもかなり浸透している。

それでは、ステロイドはどのように体に作用しているのか。

「ステロイドは、マクロファージの活性を抑制しIL-1を抑制、さらに、IL-2産生を抑制することにより、Th1の細胞障害性T細胞(感作T細胞)への分化を抑制し、 マクロファージの貪食能、NK細胞活性に伴う遅延型アレルギーを抑制することで、それらが産生する炎症性サイトカイン(IL-1,6,8)が起こす炎症を止めます。
IL-2B細胞が抗体産生細胞へ分化するのに必要なことから、抗体産生能(IgEなど)も抑制します。ただし、TNFTGFは抑制されない。」

簡単に言ってしまうと、本来体を守るために働かないといけない免疫を抑制することで、治療時に起きる必要な炎症を起こさせない。
だから、自己免疫疾患などの誤作動を止められるので症状が治まる。
これだけ聞くと、かなり強引なやり方である。

それでは、ステロイドの特異性はどこまであるのだろうか。
副作用が起きてしまうということは特異性が低いと考えられる。
太字にしたNK細胞などは、がん細胞を処理してくれる代表的な細胞である。
抑制させるにはかなりリスクが高い。

次に、順番が前後したが自己免疫疾患を簡単に説明したい。
本来、体内に自分の細胞とは異なる物質が入って来た場合、異物を処理したあと、各部署にこんなやつがいたので見付けたら処理してくださいと手配書を配る。
このときの手配書があまりにも自分の細胞の一つに似過ぎているため、間違って自分の細胞を攻撃してしまう。
または間違った手配書を作ってしまい、それをもとに自分の細胞を攻撃してしまう。
これが自己免疫疾患である。
どちらにせよ、免疫機構がきちんと働かなかったことによるミスなのは確かである。
ではどんな時に免疫が働かなくなるのか。
それは交感神経優位のときに起こる。
交感神経とは簡単に言ってしまえば、戦うときの神経である。
興奮、緊張、ストレス、色々な要因で優位になる。
だから、交感神経を抑制させれば免疫がきちんと働くようになる。
ここで一つ乗り越えなければならない問題が出て来る。
免疫がきちんと働けば今後のミスはなくなるが、今現在出回っている手配書もきちんとこなされてしまうことになる。
間違った手配書が自主回収されるといった話は聞いたことがない。
ただし、手配書(抗体)にも寿命があるので、それまでは症状が悪化することもあるだろうが、免疫機構の改善をしない限りはどちらかのミスが続くことになるので乗り越えざるを得ない。



皆さんも、日頃から免疫力UPを心掛け、病気と無縁の生活を過ごして頂きたい。





2014/06/22

毛細血管

よく毛細血管が収縮・拡張するというが、どうもこの表現に違和感を感じる。

この表現だと能動的に収縮・拡張しているように取れるからだ。


収縮出来るのは、平滑筋が存在する血管だけで、毛細血管には平滑筋がない。


よって正確に言うと、出来るのは受動的な拡張・弛緩だけである。


一緒のようだが全然違う。


血管は流れから以下に分類される。

  1. 大動脈
  2. 動脈
  3. 細動脈
  4. 毛細血管
  5. 細静脈
  6. 静脈
  7. 大静脈
毛細血管は一層の内皮細胞で出来ていて、太さ約6~8㎛(マイクロメートル)。
マイクロメートルとは1/1000ミリ。

毛細血管は大きく二つに分けられる。


「大通り毛細血管」
細動脈から細静脈に流れる優先絽

「真毛細血管」
大通り毛細血管の動脈よりの平滑筋に富んだ部分(メタ細動脈)から分岐する。
真毛細血管の入口部分(メタ細動脈)には前毛細血管括約筋があり、その開閉によって血流を調整する。
大通り毛細血管の静脈よりに流入する。

毛細血管において栄養素などは輸送蛋白やチャンネルで移動する。


一部小分子は動脈側より濾過作用で間質液に移動。

透過物質や酸素・二酸化炭素は拡散によって移動する。

血管の収縮・拡張は様々な方法で調節される。

筋原性の調節:
平滑筋自体の性質による収縮

化学物質による調節:
血管収縮物質…セロトニン、エンドセリン
血管拡張物質…ブラジキニン、ヒスタミン、乳酸、二酸化炭素、アデノシン、一酸化窒素
これらは代謝産物で組織内に蓄積することにより血管が収縮・拡張する。
エンドセリン、一酸化窒素は血管内皮細胞から産生される。

神経性の調節:
平滑筋は自律神経の支配を受けている。
主に細動脈、前毛細血管括約筋、動静脈吻合、細静脈において調節を行う。

「交感神経アドレナリン作動性血管収縮神経」
ほぼ全身の血管に分布しノルアドレナリンを分泌。
大部分の血管はこの神経の興奮が抑制されることで拡張(弛緩)する。

「交感神経コリン作動性血管拡張神経」
骨格筋に分布しアセチルコリンを分泌。
筋血流量を増やす。

「副交感神経血管拡張神経」
脳幹、仙髄から出るリラックスに関わる神経。
アセチルコリンを分泌。
脳の軟膜の血管にも分布。

筋原性や神経性による血管の収縮・拡張は平滑筋によるものなのでイメージがつく。


化学物質による収縮・拡張も実は平滑筋が関わって来る。

たとえば血管拡張物質のブラジキニン。

ブラジキニンは、B2受容体に作用し、血管内皮細胞に存在する一酸化窒素合成酵素(NOS)が活性化されアルギニンから一酸化窒素(NO)が産生される。

NOは細胞外に出て血管平滑筋に取り込まれcGMPの産生を促し、cGMPが増えるとCa²⁺が細胞内から細胞外に流出、平滑筋が弛緩し血管が拡張する。

このことから、血管の収縮・拡張には必ず平滑筋が関与していると言える。

中膜に位置する平滑筋が収縮・拡張する際、内膜の内皮細胞も一緒に収縮・拡張することから、内皮細胞自体にも弾性があることは確かである。

しかし、内皮細胞自体の能動的な収縮・拡張はない。

したがって、一層の内皮細胞から出来ている毛細血管は前毛細血管括約筋によって血液量が調整されて弾性的に拡張・弛緩することはあっても、能動的に収縮・拡張することはない。




<補足>

NOは血管内皮細胞の、
血管透過性調節作用
血小板凝集抑制作用
白血球接着抑制作用
活性酸素産生低下作
活性酸素不活性化作用
活性酸素による脂質酸化抑制さようなどが知られている。

アセチルコリンもcGMPを増加させる。





2014/06/16

心臓


心臓は私たちが寝ている間もサボることなく動いている。

充電もせずに数十年も動き続けられるのは何故なのか。


そもそも、どうやって動いているのか。


心臓には、特殊心筋といって刺激伝導系を構成する筋肉がある。


刺激伝導系とは、自ら律動的な電気信号を発しその興奮を伝導するもので、その流れは以下となっている。

  1. 洞房結節(ペースメーカー)
  2. 房室結節(田原結節)
  3. 房室束(ヒス束)
  4. 右脚・左脚
  5. プルキンエ繊維
この最初の洞房結節が心臓の拍動のリズムを形成する。

そして、心筋の電気的興奮(活動電位)は以下して起こる。

  1. 静止電位
  2. 脱分極相…心筋細胞内へのNa+の透過性が増大
  3. 初期スパイク相(オーバーシュートと初期再分極相)…Na+の透過が頭打ちとなる
  4. プラトー相…心筋細胞内へのCa²+の透過性が増大
  5. 再分極相…心筋細胞外へのK+の透過性が増大(K+を排出する事で細胞膜の興奮を治める。)
  6. 静止電位相
心臓は自律神経の管理下で常に調節されている。

交感神経はT1~5から出て心房・心室全体に分布して心臓の活動を促進させる。


副交感神経は延髄の迷走神経核から出て主に心房に分布して心臓の活動を抑制させる。


こうして心臓は自ら電気を起こし、休むことなく動き続けている。


平均心拍数は約70回/分


1回の拍出量は約70mL


1分間に約5Lの血液が心臓から排出されている。


運動時の毎分拍出量は約25Lにも達する。




<補足>


心臓


大きさは、にぎりこぶし大。

重さは、250~300g。

右房室弁:三尖弁

左房室弁:二尖弁(僧帽弁)

大動脈弁:半月弁(ポケット弁)

肺動脈弁:半月弁(ポケット弁)





2014/06/10

止血・血液凝固

私たちの体内の交通路は血管である。

その血管はどのように整備されているのか。


この整備には、赤血球、白血球と並ぶ血液中の有形成分、血小板が大きな役割を果たす。


血小板は1mm³に約15~40万あり血管の内皮細胞に対する栄養供給の働きを持つ。


血管壁が脆弱化して基底膜が露出すると、血小板が反応して露出部に栓を作り血液の流出を防ぐ。


また損傷血管からの出血の阻止には次のように働く。


止血には一次止血と二次止血がある。


まず、血小板からセロトニン、カテコールアミンが放出され血管が収縮。


破壊された血管の基底膜などのコラーゲンに血小板が粘着する。


血小板からADP、Ca²⁺が分泌され血小板血栓「白栓」が形成される。


これが一次止血。


ただし、血小板血栓はサランラップで仮止めしたようなもの、長持ちしないので二次止血の血液凝固が始まる。


肝臓で生成されたプロトロンビンがトロンボプラスチン、Ca²⁺の影響を受けトロンビン転換される。


そして血漿蛋白質のフィブリノゲンがトロンビン、Ca²⁺の影響を受けフィブリンに転換される。


そして、このフィブリン(繊維素)の網に血球成分がかかり、血液凝固「赤栓」が起こり堅固なものになる。


24~48時間後には完全に赤栓に置き換わる。


そして、血管壁の欠損部が内皮細胞に置き換えられる頃になると、役割を終えた血栓の除去が始まる。


プラスミノゲンがプラスミンに転換されフィブリンを分解。


分解されたものは老廃物として流されてしまう。


これを繊維素溶解現象という。


こうして私たちの体内の交通路である血管は常に保たれているのである。




<補足>

ビタミンKが肝臓におけるプロトロンビンの合成を促進。
紫斑病→血小板の数が少ない。
壊血病→ビタミンC欠乏
血友病A→第8因子(抗血友病因子)欠乏
血友病B→第9因子(クリスマス因子)欠乏

止血1~3分

凝固5~15分




2014/06/03

白血球

赤血球が体を活かすための細胞だとしたら、白血球は体を守るための細胞である。

白血球の数は1mm³に7000個。

顆粒球には、好中球、好酸球、好塩基球がある。
無顆粒球には、単球、リンパ球がある。

それぞれの役割を紹介しよう。


まずは、好中球。

人の体内に細菌や異物が侵入すると、好中球はアメーバ様運動をしながら毛細血管を通り抜けて近付き、それらを取り込んで分解・消化する。
そしてその後、役割を終え約1日で死ぬ。
その死骸が膿である。
多くの人が「膿むこと=悪いこと」と捉え、汚いものを見る目で見ている。
とんでもない。
実際は、私たちのために体内に入った菌をやっつけ戦死した勇敢な兵士。
感謝の言葉を掛けても足らないくらいである。
膿を見かけたら、ぜひ「菌を退治してくれてありがとう」と声をかけてあげて欲しい。

次は、好酸球。

抗アレルギー作用を有し、炎症を抑制する。
また、寄生虫を破壊する。

そして、好塩基球。

アレルギーを引き起こすことで適度な炎症を発生させ、修復作用を促す。
また、ヘパリン(血液をサラサラにする物質)を遊離して血栓の発現を阻止している。

最後は、単球。

好中球と同じく食作用を持つ。
血管外に出るとマクロファージとなり病原菌や異物を取り込み分解・消化して処理。
炎症の慢性期に出現する。

リンパ球は説明が長いのでまた別で取り上げることに。


炎症は外敵が攻めて来たことを知らせる警報サイレンの役割をしている。

赤くなったり、痛くなったり、腫れや発熱を伴ったりもするので嫌なものであるが、体を守るのにはとても役立っている。
ケガをしたりすると、血管が傷つき組織が膨らむ。
これが「腫れ」である。
このことで空間に余裕が出来、マクロファージなどの応援部隊が駆け付けやすくなる。
炎症が起こると、肥満細胞からヒスタミンが出る。
ヒスタミンの放出を知ったマクロファージは外敵が侵入したことを知り、すぐに損傷部位に駆けつけ戦い始める。
やっつけた後は、殺した外敵の一部を自分の体の外に放り出し、より強力な応援部隊であるヘルパーT細胞(免疫システムの司令官)に知らせる。
こうして、一度目の侵入は許しても再度の侵入を防ぐ能力を免疫反応という。
免疫反応は人が生きていくのに必要な反応であるが、この免疫反応が人の体を傷つけることがある。
このように体にとって不利益になる免疫反応をアレルギー反応という。
抗体にはIgM、IgD、IgG、IgE、IgAの5つに分けられる。
アレルギー反応を起こすのは主にIgE抗体である。

こうして白血球は、たった今も私たちの体を守るために戦っている。