2014/09/08

栄養と代謝(脂質)

脂質
中性脂肪の形で貯蔵され、脂肪酸やグリセロールの形でエネルギー源となる。

脂質の種類

単純脂質(中性脂肪)・・・脂肪酸とグリセロールがエステル結合したもの。
類脂質
 複合脂質(リン脂質、糖脂質、リポ蛋白質)・・他の物質と結合している脂質。
 誘導脂質(脂肪酸、グリセロール、ステロール類)・・分解産物で脂溶性のもの。



脂肪酸
飽和脂肪酸・・・・動物性脂肪に多く含まれ、常温で固体(脂)のものが多い。
不飽和脂肪酸・・・植物性脂肪に多く含まれ、常温で液状(油)のものが多い。

人はアセチルCoAを原料に種々の脂肪酸を合成するが、体内で合成出来ない脂肪酸を必須脂肪酸という。



必須脂肪酸

n(オメガ)-6系・・・リノール酸、γーリノレン酸、アラキドン酸
n(オメガ)-3系・・・αーリノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)

リノール酸、γーリノレン酸は細胞膜成分(リン脂質)として存在する。

n(オメガ)-3系は血小板の凝集を抑える。


中性脂肪

3分子の脂肪酸と1分子のグリセロール(一種のアルコール)がエステル結合している。
リパーゼは脂肪酸とグリセロールの結合を加水分解する酵素。

体内では脂質よりも糖質が優先してエネルギーとして利用されるので、糖質のエネルギーが十分な場合には、脂質はキロミクロン(リポ蛋白質)の形で脂肪組織に運ばれて、その中の脂肪酸が脂肪組織に取り込まれ、トリグリセリド(中性脂肪)に再合成され脂肪滴として脂肪細胞中に貯蔵される。

一方、エネルギー供給が不十分な場合には、肝臓・心筋・骨格筋などの毛細血管壁に存在するリパーゼが活性化して、キロミクロンのトリグリセリドから脂肪酸を遊離させる。
脂肪酸はミトコンドリアやペルオキシソームのβ酸化回路系を経てアセチルCoAとなり、クエン酸回路をへてH2OとCO2に酸化される。
1分子のパルミチン酸からおよそ129分子のATPが産生される。





2014/09/01

栄養と代謝

同化(還元):新しい物質を合成。エネルギーを消費。

異化(酸化):物質の分解。エネルギーを産生。



糖質の種類
単糖類
 グルコース
 ガラクトース
 フルクトース

二糖類
 マルトース
 ラクトース
 スクロース

多糖類
 デンプン・・・・穀物の貯蔵多糖
 グリコーゲン・・動物の貯蔵多糖
 セルロース・・・食物繊維


アミノ酸の種類
必須アミノ酸・・・生体で合成出来ない。(9種)
 メチオニン、フェニルアラニン、リシン、ヒスチジン、トリプトファン、
 イソロイシン、ロイシン、バリン、スレオニン

非必須アミノ酸・・・(11種)
 グリシン、アラニン、セリン、チロシン、プロリン、システイン、アスパラギン酸
 グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン、グルタミン


中間代謝
 吸収期と空腹期がある。

吸収期
食事後3時間で腸管から栄養素が血中に入りつつある時間帯。

空腹期
空腹期には、蓄えられたグルコースの大部分が脳で消費され、身体運動などのエネルギー源には貯蔵脂肪の異化によって賄われる。
空腹期には、まず肝臓内のグルコースが利用されるが、100g程度しか含有しておらず、貯蔵分を利用した後は、筋や脂肪組織、蛋白質などからグルコースを生成する。(糖新生)
糖新生では1日で180gのグルコースを生成出来るが、それだけでは間に合わない。
中枢神経系以外の組織でのグルコースの利用を停止し、脂肪を用いてエネルギー生成を行なう様に切り替わる。



<補足>

呼吸商
 糖質  1.0
 脂質  0.7
 蛋白質 0.8

アトウォーター係数
 糖質  4.1kcal/g
 脂質  9.3kcal/g
 蛋白質 4.2kcal/g






 

2014/08/18

無機塩類

<無機塩類> <作用> <欠乏症>
Na(ナトリウム) 体液浸透圧調節、活動電位の発生
K(カリウム) 体液浸透圧調節、活動電位の発生
Cl(塩素) 体液浸透圧調節、胃酸の成分
Ca(カルシウム) 骨・歯の成分、血液凝固に関与、筋・神経の興奮性維持 テタニー症
P(リン) 骨・筋・血液・乳汁の構成要素
Fe(鉄) ヘモグロビンの成分 鉄欠乏性貧血
I(ヨウ素) 甲状腺ホルモン(サイロキシン)の原料
Zn(亜鉛) 新陳代謝(特に蛋白質)を促進 味覚低下、肢端皮膚炎

2014/08/11

ビタミン

<ビタミン> <作用> <欠乏症>
骨の石灰化と成長 小児でくる病、成人で骨軟化症
精子形成、胎盤発育、抗酸化作用 不妊症、筋ジストロフィー、赤血球脆弱
プロトロンビンの生成 出血性素因
上皮細胞分化・形成、ロドプシン成分 上皮の角化、夜盲症、角膜乾燥症
B1 糖代謝に関与、ピルビン酸蓄積 脚気、筋力低下、心不全
B2 脂質代謝に関与 発育不全、口角炎、舌炎
B6 蛋白質代謝に関与 皮膚炎、口内炎
B12 赤血球の生成に関与 悪性貧血(巨赤芽球性貧血)
葉酸 赤血球の生成に関与 貧血
ニコチン酸 糖・蛋白代謝、脂質合成、ナイアシン ペラグラ
コラーゲン生成、抗酸化作用 壊血病

2014/08/05

元素

元素記号 元素名 量的比(%) 形態
酸素 65 水、蛋白質、脂質、糖質
炭素 18 蛋白質、脂質、糖質
水素 10 水、蛋白質、脂質、糖質
窒素 3 蛋白質、核酸、クレアチンリン酸
Ca カルシウム 1.5(2) Ca2+、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト
リン 1(0.6) リン酸カルシウム、リン脂質、ATP
カリウム 0.35(0.16) K+
イオウ 0.25(0.5) 含硫アミノ酸、ケラチン
Na ナトリウム 0.15(0.16) Na+
Cl 塩素 0.15(0.14) Cl-
Mg マグネシウム 0.05(0.03) リン酸マグネシウム、マグネシウム活性化酵素
Fe 0.004 ヘム蛋白質、含ヘム酵素
ヨウ素 0.00004 チロシン、トリヨードチロニン
Mn マンガン 微量 マンガン酵素、マンガン活性化酵素
Cu 微量 銅蛋白質、亜銅活性化酵素
Zn 亜鉛 微量  
Si ケイ素 微量  
As ヒ素 微量  
フッ素 微量 フッ化物
Br 臭素 微量  
Ni ニッケル 微量  
Co コバルト 微量 ビタミンB12
Al アルミニウム 微量  
Se セレニウム 微量 セレン酵素
ホウ素 微量  
Sr ストロンチウム 微量  
Va バナジウム 微量  
Mo モリブデン 微量 モリブデン蛋白質、モリブデン酵素
Cd カドミウム 微量  

2014/07/28

吸収

小腸の吸収機構

刷子縁

 輪状ヒダ→絨毛→微絨毛

微絨毛の中に血管網とリンパ管を持つ。



・糖質の吸収


消化可能な糖質と、非消化型の食物繊維に分けられる。

糖質は、最終的には単糖に分解されて吸収される。
単糖には、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、フルクトース(果糖)がある。
ブドウ糖とガラクトースはNa+と担体(輸送体)、ATPを伴う能動輸送で上皮に吸収。
果糖は担体を伴う受動輸送(促進拡散)で上皮に吸収。
上皮から毛細血管へは促進拡散で輸送される。


・脂質の吸収


中性脂肪(トリグリセリド)は、脂肪酸とモノグリセリドに分解され、胆汁酸の作用でミセルを形成し受動輸送(単純拡散)で上皮内に吸収される。

そして、上皮内の滑面小胞体で中性脂肪に再合成される。
その後、ゴルジ装置でキロミクロン(リポ蛋白)が形成され、細胞内を移動して細胞膜と接すると膜同士で癒合して開放されリンパ管(乳糜管)に入る。


・蛋白質の吸収


蛋白質はアミノ酸にまで分解され、その種類ごとに大半は能動輸送、わずかに受動輸送(単純拡散)で上皮に吸収。

上皮からは担体を介した能動輸送で毛細血管に入る。
ジペプチド、トリペプチドの状態でも吸収される。
一部、腸管壁の飲・食作用で蛋白質のまま吸収され、食物アレルギーが発症する。


・水の吸収


ほとんどが小腸で吸収。

わずかに大腸で吸収。
吸収は単純拡散。


・塩基(電解質・ミネラル)の吸収


一価、二価は吸収されやすいが三価は吸収されにくい。



・ビタミンの吸収


脂溶性ビタミンは脂質同様、ミセルの中に取り込まれ単純拡散で吸収される。


2014/07/21

消化 その2 

外分泌腺(消化酵素・粘液)

唾液

 PH6.8

 プチアリン

 ムチン
 パロチン・・・骨、歯の発育を促すホルモン様物質

         プチアリン

           ↓
 ・でんぷん→→→→マルトース(麦芽糖)


胃液

 PH1~2

 ペプシノゲン(主細胞)

 ムチン(副細胞)・・・胃粘膜保護
 塩酸(壁細胞) 
 内因子(壁細胞)・・・ビタミンB12の吸収に必要

           塩酸

             ↓
 ・ペプシノゲン→→→→ペプシン  
                     ↓
         タンパク質→→→→ペプトン


膵液

 PH8.5

 炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)・・・胃酸を中和

 エンテロキナーゼ
 トリプシノゲン
 キモトリプシノゲン
 アミロプシン
 ステアプシン
 ヌクレアーゼ 

 糖質の分解

       アミロプシン
          ↓
 ・でんぷん→→→→マルトース

 脂質の分解

       ステアプシン
           ↓
 ・中性脂肪→→→→脂肪酸+グリセロール

 蛋白質の分解

       エンテロキナーゼ
               ↓
 ・トリプシノゲン→→→→トリプシン
                   ↓
           蛋白質→→→→ポリペプチド    

             トリプシン

                  ↓
 ・キモトリプシノゲン→→→→キモトリプシン
                      ↓
               蛋白質→→→→ポリペプチド

     カルボキシペプチターゼ

            ↓
 ・ポリペプチド→→→→ジペプチド

 核酸の分解

    ヌクレアーゼ
       ↓  
 ・核酸→→→→ヌクレオチド


胆汁

 PH8
 肝臓で生成され、胆嚢で約8倍に濃縮。
  胆管を通って十二指腸に排出。
  消化酵素の働きを助ける。
 脂肪の消化・吸収を促進する。
 成分の胆汁酸は脂肪を乳化し、小腸から吸収されやすいようにする。


腸液

 PH7~8.5
 ブルンネル腺(十二指腸上部)が胃酸の中和
 リーベルキューン腺(小腸全体)が化学的消化の最後の仕上げをする。

 アミノペプチターゼ

 ラクターゼ
 サッカラーゼ
 マルターゼ
 リパーゼ

 糖質の分解

             マルターゼ
                ↓
 ・マルトース(麦芽糖)→→→→ブドウ糖+ブドウ糖(グルコース)

              ラクターゼ

              ↓
 ・ラクトース(乳糖)→→→→ブドウ糖+ガラクトース

              サッカラーゼ

                 ↓
 ・スクロース(ショ糖)→→→→ブドウ糖+フルクトース(果糖)

 脂質の分解

           リパーゼ
          ↓
 ・中性脂→→→→肪脂肪酸+グリセロール 

 蛋白質の分解

      アミノペプチターゼ
           ↓
・ポリペプチド→→→→アミノ酸

     ジペプチターゼ

         ↓
・ジペプチド→→→→アミノ酸

核酸の分解

  ヌクレアーゼ
       ↓
・核酸→→→→ヌクレオチド


大腸液

 PH8.5
 粘膜の保護、及び糞便の移送を容易にする。



内分泌腺(消化管ホルモン)


 分泌された部位より上を抑制

 分泌された部位より下を促進

ガストリン・・・胃液分泌促進

セクレチン・・・胃液分泌抑制、膵液分泌促進
コレシストキニン・・・膵液、胆汁分泌促進
GIP
VIP
モチリン
ソマトスタチン・・・消化液分泌抑制

2014/07/14

消化 その1

消化管の構造(内側より)

粘膜上皮・・・重層扁平上皮→口腔・食道・直腸下部などの強い機械的刺激を受ける部位

単層円柱上皮・・・胃・腸などの消化吸収の作用が著しい部位
粘膜固有層
粘膜筋板
粘膜下層
血管・リンパ管
マイスナー神経叢・・・粘膜分泌と絨毛運動を調節
輪走筋
アウエルバッハ神経叢・・・消化管運動を調節
縦走筋
漿膜

*胃には斜走筋もある。

 また、食道の外表は外膜と呼ばれ疎性結合組織で覆われ、他の組織と癒着する。


胃では

 軟らかい液状の食物は、直ちに排出が始まり、食後10分ほどで排出される。
 固形物は、排出開始まで1時間近くかかり、食後3~6時間で排出される。

小腸では

 糜汁の移送速度は10cm/分以下。
 小腸内を通過するのに4~15時間かかる。

大腸では

 食物滞留時間は、健康成人男性で約30~40時間、女性で約40~50時間。


反射の種類

 胃底-幽門洞反射・・・20秒に一回の蠕動波
 腸-胃抑制反射・・・徐々に送り出すため
 胃-回腸反射・・・食物摂取により回盲弁が開く
 腸-腸管反射・・・消化吸収作用を十分に行わせるため
 胃-結腸反射・・・横行結腸からS状結腸にかけての一日1~2回の大蠕動

2014/07/07

呼吸

呼吸は吸息(すう)と呼息(はく)に分けられる。

安静時の吸息は、主吸息筋の外肋間筋、横隔膜が、


深呼吸などの努力性吸息には、補助吸息筋の斜角筋、胸鎖乳突筋、肋骨挙筋、大・小胸筋、脊柱起立筋が収縮して胸部が拡大、肺胞内が陰圧になり空気が入る。


安静時の呼息は、主吸息筋の弛緩による受動的な呼息で筋収縮は伴わない。


努力性呼息は内肋間筋、外・内腹斜筋、腹横筋、腹直筋の収縮により胸部が縮小し肺胞内から空気が出る。


多くの人は吸っているのは酸素だけと思っている。


しかし、実際は違う。


吸気 O2  21%

    CO2 0.003%
    N2  79%

呼気 O2  16%

    CO2 4%
    N2  79%

吸っている空気のうち、O2が占める割合はたったの21%だけである。

一回換気量は約500ml。


500×(0.21-0.16)=25


一回の呼吸で取り入れられるO2の量は、25ml。



また、1gのヘモグロビンは1.34mlのO2を運ぶ。


動脈血100ml中には約15gのヘモグロビンが存在する。


よって、1.34×15=20.1ml/100ml


動脈血中のO2=約20ml/100ml


静脈血中のO2=約15ml/100ml


20-15=5

よって、約5ml/100mlのO2が組織内のミトコンドリアに供給されている。



体では、O2を使い吸収した栄養素を燃やすことで様々な代謝が行われている。

さらに、頸動脈小体、大動脈体が血液中のO2の低下に、延髄が脳脊髄液中のCO2の増加に敏感に反応しながら呼吸を促進させ常に調節している。




<補足>


肺胞 球状で直径0.1mm  両肺で約3~6億個


安静時成人の呼吸数は平均16回/分。


よって毎分約8Lの量が換気されている。






2014/06/28

自己免疫疾患

自己免疫疾患に有効な治療の一つに、ステロイドによる治療がある。

ステロイドが良くないという話は一般の人にもかなり浸透している。

それでは、ステロイドはどのように体に作用しているのか。

「ステロイドは、マクロファージの活性を抑制しIL-1を抑制、さらに、IL-2産生を抑制することにより、Th1の細胞障害性T細胞(感作T細胞)への分化を抑制し、 マクロファージの貪食能、NK細胞活性に伴う遅延型アレルギーを抑制することで、それらが産生する炎症性サイトカイン(IL-1,6,8)が起こす炎症を止めます。
IL-2B細胞が抗体産生細胞へ分化するのに必要なことから、抗体産生能(IgEなど)も抑制します。ただし、TNFTGFは抑制されない。」

簡単に言ってしまうと、本来体を守るために働かないといけない免疫を抑制することで、治療時に起きる必要な炎症を起こさせない。
だから、自己免疫疾患などの誤作動を止められるので症状が治まる。
これだけ聞くと、かなり強引なやり方である。

それでは、ステロイドの特異性はどこまであるのだろうか。
副作用が起きてしまうということは特異性が低いと考えられる。
太字にしたNK細胞などは、がん細胞を処理してくれる代表的な細胞である。
抑制させるにはかなりリスクが高い。

次に、順番が前後したが自己免疫疾患を簡単に説明したい。
本来、体内に自分の細胞とは異なる物質が入って来た場合、異物を処理したあと、各部署にこんなやつがいたので見付けたら処理してくださいと手配書を配る。
このときの手配書があまりにも自分の細胞の一つに似過ぎているため、間違って自分の細胞を攻撃してしまう。
または間違った手配書を作ってしまい、それをもとに自分の細胞を攻撃してしまう。
これが自己免疫疾患である。
どちらにせよ、免疫機構がきちんと働かなかったことによるミスなのは確かである。
ではどんな時に免疫が働かなくなるのか。
それは交感神経優位のときに起こる。
交感神経とは簡単に言ってしまえば、戦うときの神経である。
興奮、緊張、ストレス、色々な要因で優位になる。
だから、交感神経を抑制させれば免疫がきちんと働くようになる。
ここで一つ乗り越えなければならない問題が出て来る。
免疫がきちんと働けば今後のミスはなくなるが、今現在出回っている手配書もきちんとこなされてしまうことになる。
間違った手配書が自主回収されるといった話は聞いたことがない。
ただし、手配書(抗体)にも寿命があるので、それまでは症状が悪化することもあるだろうが、免疫機構の改善をしない限りはどちらかのミスが続くことになるので乗り越えざるを得ない。



皆さんも、日頃から免疫力UPを心掛け、病気と無縁の生活を過ごして頂きたい。





2014/06/22

毛細血管

よく毛細血管が収縮・拡張するというが、どうもこの表現に違和感を感じる。

この表現だと能動的に収縮・拡張しているように取れるからだ。


収縮出来るのは、平滑筋が存在する血管だけで、毛細血管には平滑筋がない。


よって正確に言うと、出来るのは受動的な拡張・弛緩だけである。


一緒のようだが全然違う。


血管は流れから以下に分類される。

  1. 大動脈
  2. 動脈
  3. 細動脈
  4. 毛細血管
  5. 細静脈
  6. 静脈
  7. 大静脈
毛細血管は一層の内皮細胞で出来ていて、太さ約6~8㎛(マイクロメートル)。
マイクロメートルとは1/1000ミリ。

毛細血管は大きく二つに分けられる。


「大通り毛細血管」
細動脈から細静脈に流れる優先絽

「真毛細血管」
大通り毛細血管の動脈よりの平滑筋に富んだ部分(メタ細動脈)から分岐する。
真毛細血管の入口部分(メタ細動脈)には前毛細血管括約筋があり、その開閉によって血流を調整する。
大通り毛細血管の静脈よりに流入する。

毛細血管において栄養素などは輸送蛋白やチャンネルで移動する。


一部小分子は動脈側より濾過作用で間質液に移動。

透過物質や酸素・二酸化炭素は拡散によって移動する。

血管の収縮・拡張は様々な方法で調節される。

筋原性の調節:
平滑筋自体の性質による収縮

化学物質による調節:
血管収縮物質…セロトニン、エンドセリン
血管拡張物質…ブラジキニン、ヒスタミン、乳酸、二酸化炭素、アデノシン、一酸化窒素
これらは代謝産物で組織内に蓄積することにより血管が収縮・拡張する。
エンドセリン、一酸化窒素は血管内皮細胞から産生される。

神経性の調節:
平滑筋は自律神経の支配を受けている。
主に細動脈、前毛細血管括約筋、動静脈吻合、細静脈において調節を行う。

「交感神経アドレナリン作動性血管収縮神経」
ほぼ全身の血管に分布しノルアドレナリンを分泌。
大部分の血管はこの神経の興奮が抑制されることで拡張(弛緩)する。

「交感神経コリン作動性血管拡張神経」
骨格筋に分布しアセチルコリンを分泌。
筋血流量を増やす。

「副交感神経血管拡張神経」
脳幹、仙髄から出るリラックスに関わる神経。
アセチルコリンを分泌。
脳の軟膜の血管にも分布。

筋原性や神経性による血管の収縮・拡張は平滑筋によるものなのでイメージがつく。


化学物質による収縮・拡張も実は平滑筋が関わって来る。

たとえば血管拡張物質のブラジキニン。

ブラジキニンは、B2受容体に作用し、血管内皮細胞に存在する一酸化窒素合成酵素(NOS)が活性化されアルギニンから一酸化窒素(NO)が産生される。

NOは細胞外に出て血管平滑筋に取り込まれcGMPの産生を促し、cGMPが増えるとCa²⁺が細胞内から細胞外に流出、平滑筋が弛緩し血管が拡張する。

このことから、血管の収縮・拡張には必ず平滑筋が関与していると言える。

中膜に位置する平滑筋が収縮・拡張する際、内膜の内皮細胞も一緒に収縮・拡張することから、内皮細胞自体にも弾性があることは確かである。

しかし、内皮細胞自体の能動的な収縮・拡張はない。

したがって、一層の内皮細胞から出来ている毛細血管は前毛細血管括約筋によって血液量が調整されて弾性的に拡張・弛緩することはあっても、能動的に収縮・拡張することはない。




<補足>

NOは血管内皮細胞の、
血管透過性調節作用
血小板凝集抑制作用
白血球接着抑制作用
活性酸素産生低下作
活性酸素不活性化作用
活性酸素による脂質酸化抑制さようなどが知られている。

アセチルコリンもcGMPを増加させる。





2014/06/16

心臓


心臓は私たちが寝ている間もサボることなく動いている。

充電もせずに数十年も動き続けられるのは何故なのか。


そもそも、どうやって動いているのか。


心臓には、特殊心筋といって刺激伝導系を構成する筋肉がある。


刺激伝導系とは、自ら律動的な電気信号を発しその興奮を伝導するもので、その流れは以下となっている。

  1. 洞房結節(ペースメーカー)
  2. 房室結節(田原結節)
  3. 房室束(ヒス束)
  4. 右脚・左脚
  5. プルキンエ繊維
この最初の洞房結節が心臓の拍動のリズムを形成する。

そして、心筋の電気的興奮(活動電位)は以下して起こる。

  1. 静止電位
  2. 脱分極相…心筋細胞内へのNa+の透過性が増大
  3. 初期スパイク相(オーバーシュートと初期再分極相)…Na+の透過が頭打ちとなる
  4. プラトー相…心筋細胞内へのCa²+の透過性が増大
  5. 再分極相…心筋細胞外へのK+の透過性が増大(K+を排出する事で細胞膜の興奮を治める。)
  6. 静止電位相
心臓は自律神経の管理下で常に調節されている。

交感神経はT1~5から出て心房・心室全体に分布して心臓の活動を促進させる。


副交感神経は延髄の迷走神経核から出て主に心房に分布して心臓の活動を抑制させる。


こうして心臓は自ら電気を起こし、休むことなく動き続けている。


平均心拍数は約70回/分


1回の拍出量は約70mL


1分間に約5Lの血液が心臓から排出されている。


運動時の毎分拍出量は約25Lにも達する。




<補足>


心臓


大きさは、にぎりこぶし大。

重さは、250~300g。

右房室弁:三尖弁

左房室弁:二尖弁(僧帽弁)

大動脈弁:半月弁(ポケット弁)

肺動脈弁:半月弁(ポケット弁)





2014/06/10

止血・血液凝固

私たちの体内の交通路は血管である。

その血管はどのように整備されているのか。


この整備には、赤血球、白血球と並ぶ血液中の有形成分、血小板が大きな役割を果たす。


血小板は1mm³に約15~40万あり血管の内皮細胞に対する栄養供給の働きを持つ。


血管壁が脆弱化して基底膜が露出すると、血小板が反応して露出部に栓を作り血液の流出を防ぐ。


また損傷血管からの出血の阻止には次のように働く。


止血には一次止血と二次止血がある。


まず、血小板からセロトニン、カテコールアミンが放出され血管が収縮。


破壊された血管の基底膜などのコラーゲンに血小板が粘着する。


血小板からADP、Ca²⁺が分泌され血小板血栓「白栓」が形成される。


これが一次止血。


ただし、血小板血栓はサランラップで仮止めしたようなもの、長持ちしないので二次止血の血液凝固が始まる。


肝臓で生成されたプロトロンビンがトロンボプラスチン、Ca²⁺の影響を受けトロンビン転換される。


そして血漿蛋白質のフィブリノゲンがトロンビン、Ca²⁺の影響を受けフィブリンに転換される。


そして、このフィブリン(繊維素)の網に血球成分がかかり、血液凝固「赤栓」が起こり堅固なものになる。


24~48時間後には完全に赤栓に置き換わる。


そして、血管壁の欠損部が内皮細胞に置き換えられる頃になると、役割を終えた血栓の除去が始まる。


プラスミノゲンがプラスミンに転換されフィブリンを分解。


分解されたものは老廃物として流されてしまう。


これを繊維素溶解現象という。


こうして私たちの体内の交通路である血管は常に保たれているのである。




<補足>

ビタミンKが肝臓におけるプロトロンビンの合成を促進。
紫斑病→血小板の数が少ない。
壊血病→ビタミンC欠乏
血友病A→第8因子(抗血友病因子)欠乏
血友病B→第9因子(クリスマス因子)欠乏

止血1~3分

凝固5~15分




2014/06/03

白血球

赤血球が体を活かすための細胞だとしたら、白血球は体を守るための細胞である。

白血球の数は1mm³に7000個。

顆粒球には、好中球、好酸球、好塩基球がある。
無顆粒球には、単球、リンパ球がある。

それぞれの役割を紹介しよう。


まずは、好中球。

人の体内に細菌や異物が侵入すると、好中球はアメーバ様運動をしながら毛細血管を通り抜けて近付き、それらを取り込んで分解・消化する。
そしてその後、役割を終え約1日で死ぬ。
その死骸が膿である。
多くの人が「膿むこと=悪いこと」と捉え、汚いものを見る目で見ている。
とんでもない。
実際は、私たちのために体内に入った菌をやっつけ戦死した勇敢な兵士。
感謝の言葉を掛けても足らないくらいである。
膿を見かけたら、ぜひ「菌を退治してくれてありがとう」と声をかけてあげて欲しい。

次は、好酸球。

抗アレルギー作用を有し、炎症を抑制する。
また、寄生虫を破壊する。

そして、好塩基球。

アレルギーを引き起こすことで適度な炎症を発生させ、修復作用を促す。
また、ヘパリン(血液をサラサラにする物質)を遊離して血栓の発現を阻止している。

最後は、単球。

好中球と同じく食作用を持つ。
血管外に出るとマクロファージとなり病原菌や異物を取り込み分解・消化して処理。
炎症の慢性期に出現する。

リンパ球は説明が長いのでまた別で取り上げることに。


炎症は外敵が攻めて来たことを知らせる警報サイレンの役割をしている。

赤くなったり、痛くなったり、腫れや発熱を伴ったりもするので嫌なものであるが、体を守るのにはとても役立っている。
ケガをしたりすると、血管が傷つき組織が膨らむ。
これが「腫れ」である。
このことで空間に余裕が出来、マクロファージなどの応援部隊が駆け付けやすくなる。
炎症が起こると、肥満細胞からヒスタミンが出る。
ヒスタミンの放出を知ったマクロファージは外敵が侵入したことを知り、すぐに損傷部位に駆けつけ戦い始める。
やっつけた後は、殺した外敵の一部を自分の体の外に放り出し、より強力な応援部隊であるヘルパーT細胞(免疫システムの司令官)に知らせる。
こうして、一度目の侵入は許しても再度の侵入を防ぐ能力を免疫反応という。
免疫反応は人が生きていくのに必要な反応であるが、この免疫反応が人の体を傷つけることがある。
このように体にとって不利益になる免疫反応をアレルギー反応という。
抗体にはIgM、IgD、IgG、IgE、IgAの5つに分けられる。
アレルギー反応を起こすのは主にIgE抗体である。

こうして白血球は、たった今も私たちの体を守るために戦っている。






2014/05/31

赤血球

血液が赤いのは赤血球によるもので、液体自体が赤いわけではない。

赤血球を取り除くと、血液は赤色ではなくなる。


でも、血を見ても液体そのものが赤く見えるので、にわかに信じ難い。


しかし、もっと信じ難いことがある。


1mm³を指で作ってみて欲しい。


かなり小さく作るのも難しい。


その中に赤血球が男性500万個、女性450万個も入っているというのだ。


5個でも難しいのに500万個って。


そのあと自分の体を見ると、ものすごく自分の体が大きく見える。


自信を失くしたときにこれを考えると、自分はすごい生命体だと自信が持てるのは私だけか…。


ところで、車はエンジンオイルなど交換するのに、血液は入れ替えなくて汚くならないのだろうか。


数十年、体の中を回り続けている。


私たちの生活で周りを見ても、数十年使い続けられるものがあるだろうか。


実は、赤血球は1日に1%、新しい赤血球と入れ替わっているのだ。


赤血球は骨髄で生成され、肝や脾の細網内皮系で破壊される。


こうして体内で、私達が知らない間にセルフで処理され続けて来たのだ。

ちなみにその赤血球、何をしているかというと主に酸素と二酸化炭素の運搬である。


赤血球の体積の30%を占めるヘモグロビン。


そのヘモグロビンの中の鉄にくっついて酸素が運ばれている。


また二酸化炭素は、75%は水にとけ重炭酸イオンとして、20%はヘモグロビンのグロビン蛋白と結合して、残りの5%は遊離ガスとして組織から肺に運ばれている。


これだけのシステムが体内には出来ている。


最初の日記に戻ってしまうが、たまたま進化で出来たとは考え難い。




<補足>

黄疸の分類
 肝前性黄疸:尿中にビリルビンが出ない。(間接型)ex.溶血性黄疸
 肝性黄疸 :血液中に間接型・直接型両方のビリルビンが見られる。ex.肝細胞性黄疸
 肝後性黄疸:尿中にビリルビンが出る。(直接型)ex.閉塞性黄疸





2014/05/29

血液

全血液量は、男性は体重の約8%、女性は体重の約7%。

血液は骨髄でつくられる。


血液中の液体成分を血漿という。


血漿に含まれるタンパク質にフィブリノゲン、アルブミン、グロブリンがある。


血漿からフィブリノゲンを除いたものを血清という。


血液から血清を除いたものを血餅(赤血球、白血球、血小板、フィブリノゲン)という。


血漿の90%は水分でその中に糖質、脂質、蛋白質、無機質が溶けている。


血漿蛋白質のうちγグロブリン以外は肝臓で生成される。


脂質は血中ではリポ蛋白として存在している。


0.9%の食塩水は血漿と等張で生理食塩水と呼ばれる。(1ℓに9g)


2014/05/24

水素水

水素水なるものが、体に良いと話題になっている。

水素が、老化の原因だとされている活性酸素と結合して水になるとか。

だからいっぱい水素を摂ればアンチエイジング効果があると。

そこで、生理学の基本を使って考察してみる。

生体外の環境は常に変化している。
しかし、生体内の環境は安定に保たれる。
これを、内部環境の恒常性「ホメオスタシス」という。

保たれているものの中に、体液のPHというものがある。

簡単に言ってしまえば、体液の濃度である。
正常体液のPHは7.35~7.45の弱アルカリ性で、酸性に傾き過ぎたりアルカリ性に傾き過ぎないように常に精密に調節されている。

そして、PHを酸性に傾ける物質が水素イオン「H+」である。

生体は体内で行われる代謝の結果、絶えずH+を産生している。
そのため、酸性に傾き過ぎないよう余分なH+を腎臓で排泄している。

常に産生され続け、腎臓が余った分を一生懸命処理しているのにわざわざ摂る必要があるのだろうか。

仮に、H+の産生量が足りなかったとしたら、体に問題があるので摂取して補えば良いと言っている場合ではない。
逆に、活性酸素の産生量が多過ぎてH+が足りないのだとしたら、また違った対応が必要になってくる。

また、アンチエイジングの敵とされている活性酸素は、好中球やマクロファージが体に入った細菌などを分解するときに使われている。

いわば大事な免疫、生体防御に必要な物質としての一面も持っている。
減らすことで老化を防いでも、免疫が低下して病気になったら意味がない。

要は何でもそうであるが、過剰がいけないというだけで、活性酸素が過剰であれば代謝で常に産生されるH+が水に変化させてくれるし、H+が多過ぎれば腎臓が排泄してくれる。


結局、体が勝手に調節してやってくれているのだ。

それを、外から余計なことをする必要などないと私は考えている。
以前の日記にも書いたが、人間の体は私達が知っている以上にハイスペックなのである。
もし何かをしたいのであれば、そういった調節がきちんと働くよう規則正しい生活を心掛けることが一番大事なのではないかと私は考える。


<補足>
最近、水素ガスとして知られる分子状の水素「H2」を使った研究で良い結果が出ているらしい。
ただし、この水素ガスは巷に出回っている非科学的な水素とは異なるものだとか。
ペットボトルに入っている水素も、手に届くころには抜けてしまっていると言い切られている。





2014/05/20

飲水

水飲み健康法、水飲みダイエットなど色々あるが、やはり賛否が分かれている。
そんな中、私が気になるのは飲む量である。
どのサイトを見ても飲む量の詳しい説明をほぼ見かけない。
いったい、この1.5~2Lの数字はどこから来ているのか。
一番大事なところをメディアは記事にしてない。
いかに適当かが良く分かる。

説明するので、もしこの健康法を取り入れてる人がいたらぜひ参考にして欲しい。

まず、この数字がどこから来たのか。

成人の体液は体重の60%である。

その体液量は常に一定である。
一日に体に出入りする水の量は総体液の7%である。

体重60kgの人の総体液量は60×0.6で約36L。

一日の出納量は36×0.07で約2.5Lとなる。

どんな形で摂取と排泄が行われているかというと、


摂取

 飲料水            1.3L
 食品中の水分        0.9L
 酸化水(代謝で出る水分) 0.3L

排泄

 尿               1.5L
 汗               0.5L
 肺(呼吸)           0.4L
 糞便              0.1L

成人男性の60kgは平均的でよく使われる。

おそらくここから1.5~2Lという数字になったのであろう。

しかし、この健康法・ダイエットを取り入れてる人の多くは女性なのでは。

たとえば、体重が45kg程度の小柄な女性の場合、

45×0.6×0.07=1.89L


食品中の水分は500mlくらいはあるだろうから、酸化水も考慮すると約1Lでも充分となる。

1Lで充分な女性が2Lも飲んでたら、お腹いっぱいでご飯が食べられず、逆に不健康になってしまう。

やる時はぜひ自分の体重を当てはめて計算して欲しい。

食品中の水分は人によって変わると思ので、出た数字から酸化水を引いた分くらいを上限に水を摂ると良いかもしれない。


<補足>

スポーツなどをした場合はしっかりと水分補給をするように。
ノドが渇いたと感じた時にはもう遅い、脱水症状だという先生もいる。
ちなみに人は、350mlの水分を消失すると視索上核の血液浸透圧受容器が感知してノドが渇いたと感じる。
基本的な缶ジュースが350mlなのもそこから来ている。

そして、覚えていてもらいたい注意点。

「今日、全然水飲んでないや」と一気に大量の水を飲むのはやめるように。
水中毒というものがあるからだ。
また、東洋医学的には体を冷やすのは良くないとされているので、飲む水は冷やさずせめて常温で。