2026/08/27

創傷部位の電気走性と治癒

正常な皮膚

Na⁺/K⁺-ATPaseやイオンチャネルによるイオン輸送によってTEPが維持されている

約10〜60 mVの経皮上電位差(高低差)

傷ができる

傷口でTEPが短絡・低下

正常皮膚と傷口との間に電位勾配ができる

創傷部が相対的に陰極になる

創傷電場:約100〜200 mV/mm(その坂の急さ)

イオンが移動する(イオン電流)

創傷電流(μA/cm²オーダー)が発生する

・一般的な表皮創傷は約1~10 μA/cm²

・ヒト切断指は最大22 μA/cm²

細胞がこの電場を感知して移動する

ケラチノサイトなどが電場にさらされる(*1)

膜受容体・インテグリン・イオンチャネル等が電場感知

Ca²⁺、Src、PI3K/Aktなどが活性化

PIP3などの細胞内シグナルが傷口側へ偏る(*2)

(PI3K がリン脂質PIP2をリン酸化してPIP3に変える→ PIP3が増え移動方向側に偏り極性形成)

Rac-GEFが移行

Rac-GDPがRac-GTPへ

WAVE-Arp2/3が活性化

アクチンの分岐・重合による細胞骨格の再構築

傷口側に葉状仮足形成

インテグリンを介して細胞が足場に接着

細胞が陰極=傷口方向へ移動(*3)

再上皮化

傷が閉じる

TEPが再形成される

創傷電場・創傷電流が消える

創傷治癒



*1

皮膚のケラチノサイトは、生理的強度の電場に置かれると基本的に陰極方向=創傷方向へ移動します。


*2

電場によってSrcおよびイノシトールリン脂質シグナルが活性化し、その活性が細胞の移動方向に極性化する。


*3

電場そのものが細胞を磁石のように「引っ張っている」のではない。

電場が「こっちが前だ」という情報を与え、細胞自身の移動装置を作動させている。

2026/04/23

インスリン抵抗性と分泌量低下

今回、インスリン抵抗性と分泌量低下について、それぞれの作用機序の一例を書き出してみました。


インスリン抵抗性

本来は、インスリンがインスリン受容体に結合→

インスリン受容体のチロシンキナーゼ活性化→

インスリン受容体チロシンキナーゼがIRS-1のチロシン残基をリン酸化→

PI3K(ホスホイノシトール3-キナーゼ)からAktが活性化→

GLUT4の細胞膜移行を誘導→

グルコースの取り込み


ところが、細胞内に過剰な脂肪酸が入ると、代謝されずにジアシルグリセロール(DAG)が蓄積→

DAGがプロテインキナーゼ(PKC)を活性化→

すぐ隣にあるIRS-1のセリン残基をリン酸化→

IRS-1の構造変化によりチロシン残基のリン酸化が阻害→

PI3Kの結合が遮断→

GLUT4の細胞膜移行が起こらず→

グルコースの取り込み低下


これをマクロ視点で言語化したものがインスリン抵抗性




インスリンの分泌量低下


グルコースの過剰代謝によりミトコンドリア内で活性酸素(ROS)が発生し、β細胞特有の抗酸化酵素活性が低いことも相まって、細胞障害が進みます。


本来、膵β細胞の核内にPDX-1、NeuroD1、MafAといった転写因子群がプロモーター上で複合体を形成することで、初めて強力なインスリンの転写が維持されます。


ところが、転写因子であるMafAが活性酸素(ROS)によるユビキチン-プロテアソーム系で分解されたり、同じく活性酸素(ROS)によりp38MAPKが活性化しPDX-1がリン酸化することで核外移行シグナルが活性化し核内から強制退去させられるため、インスリン遺伝子の転写が開始できなくなります。

これによりインスリンの分泌量が減るのです。


要は、組織の化学的環境の変化が起きているだけ。

それをマクロ視点で言語化したものが膵臓疲労