クエン酸回路は、アセチルCaAが組み込まれることによって反応が始まります。
そのためには、まず解糖系で生成したピルビン酸がアセチルCaAにならないといけません。
ピルビン酸からアセチルCaAの生成には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体という酵素と、チアミンピロリン酸(TPP)、リポアミド、CoA、FAD、NADという補酵素が必要になります。
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体は、
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)
ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(E2)
ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(E3)
という3つの酵素からなり、反応は5段階に分かれています。
5段階の過程は、
ピルビン酸
ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸
S-アセチルジヒドロリポイルリシン
アセチルCaA
となります。
これだけ見ると3回の反応ですが、これにFADとNADの酸化還元反応が補助的に入ります。
ピルビン酸からヒドロキシエチルチアミンピロリン酸の生成には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)とチアミンピロリン酸(TPP)が必要になります。
ピルビン酸(C3H4O3)にチアミンピロリン酸(C12H19N4O7P2S)が付き、CO2を放出し、ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸が出来ます。
C3H4O3+C12H19N4O7P2S→C2H4O~TPP+CO2
ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸(C2H4O~TPP)からS-アセチルジヒドロリポイルリシンの生成には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)とリポアミド(C8H15NOS2)が必要になります。
E1を触媒として、ヒドロキシエチルチアミンピロリン酸(C2H4O~TPP)にリポアミド(C8H15NOS2)が付き、TPPが放出され、S-アセチルジヒドロリポイルリシン(C10H19NO2S2)が出来ます。
C2H4O~TPP + C8H15NOS2→C10H19NO2S2 + TPP
このときのリポアミドが、wikiではα-リポ酸(C8H14O2S2)となっていて混乱する人もいると思いますが注意してください。
S-アセチルジヒドロリポイルリシンからアセチルCaAの生成には、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(E2)とCoAが必要になります。
E2を触媒として、S-アセチルジヒドロリポイルリシン(C10H19NO2S2)にCoA(C21H36N7O16P3S)が付き、ジヒドロリポアミド(C8H17NOS2)が放出され、アセチルCaA(C31H55N8O18P3S3)が出来ます。
C10H19NO2S2+C21H36N7O16P3S→C31H55N8O18P3S3+C8H17NOS2
ジヒドロリポアミドからリポアミドの生成には、ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(E3)とFADが必要になります。
E3を触媒として、ジヒドロリポアミド(C8H17NOS2)がFADによる酸化反応を受けてリポアミド(C8H15NOS2)が出来ます。
C8H17NOS2+FAD→C8H15NOS2+FADH2
酸化反応により出来た還元型FADはNADの酸化反応を受けてまた酸化型FADに戻ります。
FADH2+NAD→FAD+NAD+H+
これでやっと、ピルビン酸からアセチルCoAが出来ました。
ここからクエン酸回路が回り始めます。
反応は以下になります。
アセチルCoA
クエン酸
シスアコニット酸
イソクエン酸
α-ケトグルタル酸
スクシニルCoA
コハク酸
フマル酸
リンゴ酸
オキサロ酢酸
アセチルCoAからクエン酸の生成にクエン酸シンターゼという酵素とオキサロ酢酸と水が必要になります。
クエン酸シンターゼを触媒として、アセチルCaA(C31H55N8O18P3S3)にオキサロ酢酸(C4H4O5)と水が付き、CoA(C21H36N7O16P3S)を放出してクエン酸(C6H8O7)が出来ます。
C31H55N8O18P3S3+C4H4O5+H2O→
C6H8O7+C21H36N7O16P3S
クエン酸からシスアコニット酸の生成には、アコニターゼという酵素が必要になります。
アコニターゼを触媒として、クエン酸(C6H8O7)から水が抜けてシスアコニット酸(C6H6O6)が出来ます。
C6H8O7→C6H6O6+H2O
シスアコニット酸からイソクエン酸の生成には、同じくアコニターゼと水が必要になります。
シスアコニット酸(C6H6O6)に水が付きイソクエン酸(C6H8O7)が出来ます。
分子式的にはクエン酸と同じになります。
C6H6O6+H2O→C6H8O7
イソクエン酸からα-ケトグルタル酸の生成には、イソクエン酸デヒドロゲナーゼという酵素とNADが必要になります。
α-ケトグルタル酸を触媒とし、イソクエン酸(C6H8O7)はNADの酸化反応を受けCO2を放出してα-ケトグルタル酸(C5H6O5)が出来ます。
C6H8O7+NAD→C5H6O5+CO2+NADH2
α-ケトグルタル酸からスクシニルCoAの生成には、オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体という酵素と、チアミンピロリン酸(TPP)、リポアミド、CoA、FAD、NADという補酵素が必要になります。
ピルビン酸からアセチルCoAと同じ反応になり、スクシニルCoA(C25H40N7O19P3S)とCO2とNADH2を放出します。
C5H6O5+C21H36N7O16P3S→C25H40N7O19P3S+CO2+H2
スクシニルCoAからコハク酸の生成には、スクシニルCoAシンターゼとGDPとリン酸が必要になります。
スクシニルCoA(C25H40N7O19P3S)にGDP(C10H15N5O11P2)とリン酸(H3PO4)が付き、CoA(C21H36N7O16P3S)とGTP(C10H16N5O14P3)を放出してコハク酸(C4H6O4)が出来ます。
C25H40N7O19P3S+C10H15N5O11P2+H3PO4→C4H6O4+C21H36N7O16P3S+C10H16N5O14P3
コハク酸からフマル酸の生成には、コハク酸デヒドロゲナーゼという酵素とFADが必要になります。コハク酸(C4H6O4)がFADによる酸化を受けてフマル酸(C4H4O4)が出来ます。
C4H6O4+FAD→C4H4O4+FADH2
フマル酸からリンゴ酸の生成には、フマラーゼという酵素と水が必要になります。
フマル酸(C4H4O4)に水が付加されリンゴ酸(C4H6O5)が出来ます。
C4H4O4+H2O→C4H6O5
リンゴ酸からオキサロ酢酸の生成には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼという酵素とNADが必要になります。
リンゴ酸(C4H6O5)がNADによる酸化を受けてオキサロ酢酸(C4H4O5)が出来ます。
C4H6O5+NAD→C4H4O5+NADH+H+
以上がクエン酸回路の流れになります。
クエン酸回路の反応をまとめると、
アセチルCoA+CoA+3NAD+FAD+GDP+リン酸+2H2O→
2CO2+2CoA+3NADH+3H++FADH2+GTP
となります。
補足
クエン酸回路の維持
クエン酸回路の中間代謝物が減少すると、アセチルCoAが回路に入るために必要なオキサロ酢酸の濃度も低下し、回路が維持出来なくなります。
そのためピルビン酸からオキサロ酢酸を生成する経路があります。
ピルビン酸からオキサロ酢酸を生成するには、ピルビン酸カルボキシラーゼという酵素とATPとCO2が必要になります。
ピルビン酸カルボキシラーゼを触媒とし、ピルビン酸(C3H4O3)にATP(C10H16N5O13P3)とCO2が反応します。
このとき、ATPが加水分解され(ADPC10H15N5O10P2)とリン酸(H3PO4)が放出してオキサロ酢酸(C4H4O5)が出来ます。
C3H4O3+C10H16N5O13P3+CO2+H2O→C4H4O5+C10H15N5O10P2+H3PO4
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