また、活動中にも関わらず10時間くらい摂食しないと、肝臓のグリコーゲンの分解も尽きてしまいます。
そうならないように、グルカゴンの分泌をシグナルにグルコース以外の物質からグルコースを作るための仕組みが糖新生経路です。
糖新生は肝臓、腎臓、膵臓、小腸で行われます。
糖新生のおもな原料は、乳酸、グリセロール、アミノ酸です。
以下、その生成過程を見て行きましょう。
乳酸は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇してなくても運動の初期などでグルコースが必要になれば糖新生系に入ります。
乳酸からピルビン酸になるには乳酸脱水素酵素とNAD+が必要になります。
乳酸(C3H6O3)が酸化されピルビン酸(C3H4O3)になります。
C3H6O3+NAD→C3H4O3+NADH2
その後、ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸にはエネルギー差が大きくて直接戻れないので、リンゴ酸-ホスホエノールピルビン酸シャトルによって迂回して逆走します。
ピルビン酸はまずミトコンドリア内に移動しオキサロ酢酸となります。
ピルビン酸(C3H4O3)からオキサロ酢酸(C4H4O5)になるには、ピルビン酸カルボキシラーゼとATPとCO2が必要になります。
C3H4O3+ATP+CO2→C4H4O5+ADP+H3PO4
その後、オキサロ酢酸はミトコンドリアの膜を通過出来ないので一旦リンゴ酸になります。
オキサロ酢酸(C4H4O5)からリンゴ酸(C4H6O6)になるには、リンゴ酸デヒドロゲナーゼとNADH2が必要になります。
C4H4O5+NADH2→C4H6O6+NAD+
この後、ミトコンドリアの膜を通過しリンゴ酸からオキサロ酢酸に戻ります。
この際もリンゴ酸デヒドロゲナーゼによってオキサロ酢酸に戻ります。
分子式は上記逆走。
細胞質内に出たオキサロ酢酸は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼの作用を受けてホスホエノールピルビン酸になります。
オキサロ酢酸(C4H4O5)からホスホエノールピルビン酸(C3H5O6P)になるには、ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼとGTPが必要になります。
この際GTPが加水分解されリン酸基がつき、GDPとCO2が生成されます。
C4H4O5+H3PO4→C3H5O6P+CO2+H2O
ホスホエノールピルビン酸からは解糖系を逆走して行きますが、2箇所だけ解糖系とは違う酵素が必要になります。
まず、フルクトース1,6-ビスリン酸からフルクトース6-リン酸の生成にはフルクトース1,6-ビスホスファターゼとH2Oが必要になります。
フルクトース1,6-ビスリン酸(C6H14O12P2)はフルクトース1,6-ビスホスファターゼにより脱リン酸化されフルクトース6-リン酸(C6H13O9P)になります。
C6H14O12P2+H2O→C6H13O9P+H3PO4
最後は、グルコース6-リン酸からグルコースの生成になりますが、小胞体内のグルコース6-ホスファターゼが酵素として働き、脱リン酸化されます。
このグルコース6-ホスファターゼは肝臓と腎臓にしか発現していません。
C6H13O9P+H2O→C6H12O6+H3PO4
乳酸さんから糖新生の流れは以上になりますが、筋肉内の解糖系でピルビン酸からアラニンになった場合も同様です。
アラニンは、筋肉から肝臓に運ばれてアラニントランスアミナーゼによりピルビン酸に戻され糖新生系路に入ります。
一方、アミノ酸は肝臓に貯蔵されていたグリコーゲンがなくなると糖新生が始まります。
ここで使われるアミノ酸は糖原性アミノ酸と呼ばれ、糖原性アミノ酸はTCAサイクルでオキサロ酢酸を経てホスホエノールピルビン酸になり糖新生系路に入ります。
最後に、グリセロールもアミノ酸と同様に肝臓に貯蔵されていたグリコーゲンがなくなると糖新生が始まります。
中性脂肪が加水分解され生じたグリセロールは、脂肪組織内にはグリセロール3-リン酸にするための酵素グリセロールキナーゼがないため血中に放出されて肝臓に入ります。
グリセロール(C3H8O3)は細胞質内でグリセロールキナーゼによりリン酸化されグリセロール3-リン酸(C3H9O6P)となります。
C3H8O3+H3PO4→C3H9O6P+H2O
グリセロール3-リン酸は細胞質内でグリセロール3-リン酸デヒドロゲナーゼにより還元されジヒドロキシアセトンリン酸(C3H7O6P)になり、解糖系を逆走して行きます。
C3H9O6P+NAD→C3H7O6P+NADH2
これらの糖新生により再生されたグルコースは、血流に乗ってグルコースの欠乏した組織に運ばれて行きます。
<補足>
インスリンは、ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼと、グルコース6-ホスファターゼの遺伝子のmRNAへの転写を抑制することで、糖新生を抑制します。
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