2016/05/24

筋肉

収縮
大脳に発する運動指令は、小脳において修飾されたのち、遠心性の運動神経を介して、活動電位として伝えられ、運動神経と筋肉の連接部である神経筋接合部に至る。運動神経の末端にあるシナプス前終末に活動電位が伝わると、ここに分布する電位依存性Caチャンネルを開口させて、Ca電流を生じる。これによるCa濃度上昇はアセチルコリンを放出させ、ここで放出されたアセチルコリンは、シナプス間隙に拡散して、筋肉側で神経終末と結合している終板に達する。終板にはアセチルコリンのニコチン受容体があり、これにアセチルコリンが結合することでNa、K、Caが流入して、いわゆる終板電位 (EPP)を発生させる。これは、筋鞘を介して筋線維全体に伝播されたのち、横行小管(T管)を介して筋線維の中に入って筋小胞体へ至り、筋小胞体からCa2+の放出を引き起こす。これにより細胞内Ca2+濃度が増加し、トロポニンCとCa2+が結合することで、アクチンとミオシンの間に介在するトロポミオシンが移動して、アクチンとミオシンの両フィラメントの結合が可能になる。ATPがクロスブリッジに作用してミオシン頭部の首振り運動(滑走)が起こり、筋が収縮する。ATP1分子の分解あたり最高60nmまでアクチンフィラメントが動く。

弛緩
筋細胞膜の膜電位が再分極され、静止膜電位に戻る。細胞質内の過剰なCa2+はATPを用いて能動輸送で筋小胞体に回収される(Ca2+-ATPase)細胞質内のCa2+濃度が10-7M程度に低下すると、トロポニンCからCa2+がはずれてトロポミオシンが元の位置に戻ることで、アクチンとミオシンの結合が解離され、筋が弛緩する。

櫻田式筋弛緩術
運動をして筋肉内のATPが枯渇して行くと筋の弛緩が出来なくなる。収縮出来る筋が減少すればパフォーマンスも落ちて来る。しばらく休めば筋力が回復した状態になるのはATPが作られCa2+が回収され弛緩が起こり収縮出来る筋が用意出来るからである。
となると、筋の弛緩には筋細胞の膜電位が静止膜電位に戻るか、Ca2+を意図的に筋小胞体に回収させるかのどちらかが必要ということになる。
しかし、このATPを分解しながら起こす収縮は5~10ミリ秒しか続かない。
筋小胞体のATPaseが急速にカルシウム濃度を減少させているからである。
だとすると、筋小胞体へのCa2+の回収を意図的に促進させる必要はなくなる。
よって、筋の弛緩を意図的に誘発させるとしたら、活動電位を抑制させることで静止膜電位に近づける方法となる。

そこで出て来るのが、抑制性介在ニューロンだ。
ある実験で、筋の弛緩をイメージしたら皮質脊髄路の興奮性が安静時より有意に減少したとある。このことは錐体細胞やα運動ニューロンに抑制性の信号が送られていることを示す。ただし、安静時よ りも皮質脊髄路の興奮性が低くなったのは一時的であり、 すぐに安静時と同等の興奮性になった。つまり、筋収縮のイメージから筋弛緩のイメージをする際、抑制指令は高まった皮質脊髄路の興奮性を下げるために一時的に出力されていると考えられる。

この抑制性介在ニューロンを利用したのが自原抑制である。
筋が伸張し筋紡錘(錘内筋繊維)が伸張することでⅠa群求心性繊維から活動電位が発生。上行し脊髄内でα運動ニューロンにシナプス。α運動ニューロンが興奮し同名筋(錘外筋)が収縮。同名筋が収縮することで腱紡錘に張力が発生しⅠb群求心性繊維が興奮。上行し脊髄内の抑制性介在ニューロンにシナプス。抑制性介在ニューロンがα運動ニューロンを抑制し同名筋(錘外筋)が弛緩する。
この自原抑制を上手く使うことで意図的に筋を弛緩させることが出来ると考える。
まず、伸張反射が起きない様にゆっくりとした圧で、また屈曲反射が起きない様に優しい圧で腱紡錘に張力を発生させる。この際、伸張反射には腱紡錘は関与しないことから、刺激は直接筋に入れ、張力を発生させるしかない。
また持続圧で張力を発生させ続けることで確実にⅠb群求心性繊維を興奮させ、筋を弛緩させることが出来る。
これがLaluz鍼灸院の手技の機序である。




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