2020/07/10

気圧と自律神経の関係

「低気圧になると、交感神経と副交感神経、どちらが優位になるの?」

ネットでは両方の意見が上がっていますので、もはやどちらを信じて良いのか分かりません。
そこで、一つずつ解説して行こうと思います。

まず、気圧とは気体の圧力を言い、その気体も物質です。
その物質の内容は、約78%が窒素、約20%が酸素、その他約2%となります。
そのため、気圧が下がると言うことは、物質内容も減ることになります。
この酸素が減る状況は、低酸素症と同じ定義に当て嵌められます。

取り込む酸素量が少なくなると、大動脈小体と頚動脈小体が酸素分圧の低下を検知して、それぞれの求心性刺激が延髄の呼吸中枢を刺激して換気を促進させます。
要はたくさん空気を取り込もうとします。
このとき働くのは交感神経になります。

また、構造的には、低気圧による血管の外圧が減ることで血圧も下がります。
この血圧の低下を、大動脈弓と頚動脈洞が検知すると、心拍数を増やして血圧を調節しようとします。
このとき働くのも交感神経になります。

これらの機能は反射によるものなので、身体が正常であれば必ず起こる反応になります。
よって、

「低気圧になると交感神経が優位になる」

がエビデンス的に理に叶っていると考えます。


2020/06/05

乳酸

乳酸は、疲労物質の性質も持つが、同時にエネルギー物質でもある。

乳酸の代謝経路は以下である。

激しい運動時の速筋繊維では、解糖によるピルビン酸の生成速度がクエン酸回路によるピルビン酸の酸化速度を上回る。
増え過ぎたピルビン酸は、乳酸デヒドロゲナーゼにより乳酸に還元され、細胞は酸化還元バランスを取り戻す。
乳酸は強い酸のため、細胞内に残ると細胞内のpHが低下し、筋肉タンパク質が変性して筋肉が障害を受けてしまう。
そこで、乳酸を代謝する負担を筋肉から取り除くために、乳酸を他の組織に移動させる。

一つ目の組織は、心筋細胞や遅筋繊維である。
ひとたび酸素の豊富な細胞に取り込まれると、乳酸は酸化され再びピルビン酸に戻り、クエン酸回路と酸化的リン酸化を経てATPを生成する。
これらの細胞がグルコースの代わりに乳酸を使うことで、循環血中のグルコースは速筋線維で利用されやすくなる。

もう一つの組織は、肝臓である。
肝臓に移動した乳酸は、ピルビン酸に変換され糖新生の経路に入りグルコースとなり循環血中に放出される。
この糖新生の経路をコリ回路という。

参考文献:ストライヤー生化学より

2020/05/21

果糖 ver.2.0

人間の身体には生命を維持する上でビタミンが必要不可欠です。
そのビタミンを補う方法の一つとして、フルーツを食べることが普通になってますが、皆さんはフルーツが身体にもたらす影響をどこまでご存知でしょうか。

「美容に特化するなら、フルーツは食べない方が良い。」

それでは、信じたくない方のために、説明して行きましょう。
最初に一般の方向けに説明し、最後に専門の方向けに捕捉を書いてます。


フルーツを食べると、ビタミンと一緒に果糖(以下、フルクトース)も摂取することになります。
そのフルクトースは、血糖値が上がりにくいとあるのですが、何故上がりにくいのでしょうか。
グルコースとフルクトースでは一体何が違うのでしょうか。
ちなみに化学式はどちらもC6H12O6で一緒です。
実は、フルクトースは体内ではあまり良い物質とされていないようです。
そのため、腸から吸収されたフルクトースは門脈を経て肝臓で真っ先に分解されてしまうのです。
だから、血糖値が上がりにくいのです。

では、何故フルクトースが良い物質とされていないのでしょうか。
それは、フルクトースはグルコースより10倍もメイラード反応が起きやすいからです。
メイラード反応とは簡単に言えば老化を促進させる反応です。
しかも、通常、生体内の物質はそれだけだと反応が起こりづらく、酵素を利用して爆発的に反応を促進させます。
しかし、フルクトースのメイラード反応は、この酵素を必要とせずアミノ酸だけで反応が出来てしまうのです。
トレーニングをしてタンパク質(アミノ酸)をがっつり摂って、健康的にフルーツメインの食事をして
周りにもいるはずです。
もはや、老化に向けてアクセル全開です。

また、血糖値が上がりにくいから太らないとおっしゃってる方がおりますが、これは完全に間違いです。
説明は後述の専門的な補足欄に書くので答えだけ述べてしまうと
フルーツを食べ過ぎると、太ります。
その脂肪は肝臓にも蓄積され脂肪肝にもなりやすくなります。
また、その反応の過程で肝臓に負担を掛け肝機能に障害を与えます。
これらは全て、私個人の見解ではなく、専門の参考書に載っている内容です。

では、肝心のビタミンはどうすれば良いのかと言いますと、フルーツ以外の食材からでもほとんどのビタミンを摂ルことが出来ます。
ビタミンCと言えばレモンをイメージしますが、パプリカやブロッコリーの方がビタミンCは多いです。
「ビタミン◯   食材」で検索すれば嫌って程出て来ます。

ついでですが、フルーツから酵素が摂れると書いてる方がいるのですが、酵素はそもそもタンパク質です。
アミノ酸を摂っていれば、わざわざフルーツから摂る必要はありません。

美容に興味のある方は、ぜひ

「フルーツ以外からビタミンを摂る」

を実践にしてみてください。




以下、専門的な捕捉になります。

フルクトースは、肝臓と脂肪組織で代謝され解糖系の中間体に変換される。
中間体への代謝過程は以下である。

大部分のフルクトースは、肝臓でフルクトキナーゼによってフルクトース1-リン酸に変換。
次に、フルクトース1-リン酸はフルクトース1-リン酸アルドラーゼによって、ジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒドに開裂。
次に、グリセルアルデヒドは、トリオキナーゼによってリン酸化されグリセルアルデヒド3-リン酸に変換。

脂肪組織では、フルクトースはヘキソキナーゼによってリン酸化されフルクトース6-リン酸になることもある。


フルクトースが太る理由、そして体に良くないとされる理由は以下です。

フルクトース由来のグリセルアルデヒド3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸は、解糖系で最も重要な制御段階の6-ホスホフルクトキナーゼが触媒する反応を回避してしまっている。
そのため、そこから出来た過剰なアセチルCoAは脂肪酸に変換され脂肪組織の輸送されたり、肝臓も脂肪酸を蓄積し始め脂肪肝をもたらす。
また、フルクトキナーゼとトリオキナーゼの活性は、肝臓のATPと無機リン酸を枯渇させ肝機能に障害を与える。
参考文献 ストライヤー生化学(P433)

2020/05/07

P型ATPアーゼの輸送機構

PATPアーゼの輸送機構

筋小胞体カルシウムの輸送機構
①細胞質側からCa2+のポンプに結合
ATPの結合
ATPの結合により、構造変化が起こりNa+を取り込む。
ATPの加水分解により生じたリン酸基がAsp351への転移
ADPの放出により、酵素が外転し膜の反対側にCa2+の放出
⑥リン酸化アスパラギン酸の加水分解により無機リン酸基が放出
⑥安定化していた相互作用が失われ酵素が外転
⑦サイクル終了


Na+,K+-ATPアーゼの輸送機構
①細胞質側からの3つのNa+がポンプに結合
ATPの結合
ATPの結合により、構造変化が起こりNa+を取り込む。
ATPの加水分解により生じたリン酸基がAsp351への転移
ADPの放出により、酵素が外転し膜の反対側にNa+を放出
Na+の放出された側からK+が結合
⑦次に、リン酸化アスパラギン酸の加水分解により無機リン酸基が放出
⑧安定化していた相互作用が失われ酵素が外転しKa+が放出される
⑨サイクル終了

活動電位

シナプス間隙は50nmほどの狭い隙間で、神経インパルスが神経軸索終末に到達すると、およそ300個の膜に結合したアセチルコリンの小胞が一斉にシナプス間隙に放出される。
アセチルコリン受容体は、リガンド依存性チャネルであり電位は必要としない。
アセチルコリンが受容体の細胞外ドメインに結合すると、膜貫通ヘリックスがアロステリック変化により15度回転し小孔の壁は大きな疎水性アミノ酸残基ではなく小さな極性アミノ酸残基が占めるようになり、N+を細胞内にK+を細胞外に通すことのできる開いた状態となる。
この間、1ミリ秒以内に正の値になる。
膜電位が-40mVに近づくと、N+チャネルの電位依存性パドルが引っ張りN+チャネルが開く。
これによりN+が急速に細胞内に流入し膜電位は急速にナトリウムの平衡電位へと上昇し脱分極する。
また1ミリ秒後には多くのK+チャネルが同じ様に開き始め、K+が細胞外に流出する。
同時に、不活性化を担う球が開いたN+チャネルを塞ぎN+電流を減少させる。
これによりアセチルコリン受容体も不活性化し、膜電位は急速にK+イオンの平衡電位と下降し過分極する。
開いたK+チャネルも球ドメインによる不活性化受けカリウム電流も遮断され静止膜電位に戻る。
膜電位が最初の値に近づくと、活性化ドメインは外れ、チャネルも元々の閉じた状態に戻る。
膜の脱分極は近傍領域の膜に存在するチャネルを開くため、これらの過程は神経に沿って伝播する。
典型的な神経細胞は、細胞膜1μm2あたり100個のN+チャネルを含んでいる。
膜電位が+20mvのとき、個々のチャンネルは1秒間に107乗個のイオンを通す。
このイオンの流入速度に相当するN+濃度の上昇はわずか1%程度となる。
この感受性の高さにより、活動電位は長い距離にわたって速い繰り返し速度で効果的にシグナルを伝えることができる。

2020/03/26

抗がん剤を怖がる方へ

以前、FBで上げたものなのですが、埋もれさせるのは勿体ないので治療院のコラムに再投稿しました。
抗がん剤に関するコラムになります。

ゴミみたいな記事が出回りまくってるので、生化学オタクとして抗がん剤を薦める理由を書いてみました。
まずは、がんを超〜わかり易く説明してみたいと思います。

がん細胞は、外から入って来たウイルスや菌ではなくて完全に自分の細胞です。
簡単に言ってしまえば、仕事をしない自分の細胞です。
厄介なことに、その細胞は仕事をしない上にやたらと増殖するのです。
会社に一人二人仕事しない人がいても何とかなるかも知れません。
しかし、その仕事をしない人が「この会社楽だよ」と仕事をしない人ばかり連れて来てしまい、会社が仕事しない人だらけになってしまったらどうなるでしょうか。
会社は潰れますよね。
がんは、これと一緒です。

しかし、人間の身体の中には、免疫という監査役がいて、きっちり見張って処理してくれているはずなのですが、ストレス等で免疫が低下すると、この監査役が働けないのです。
そのせいで、どんどん仕事をしない細胞(人)ばかりが増えて臓器(会社)本来の機能が停止して死(倒産)に至るのです。

そんな免疫が働きづらいストレス社会でがんと戦うには、やはり薬に頼るしかありません。
薬には我々のように目がないので、ターゲットを認識するキーワードのようなものが必要になります。
標的が自分の細胞ではないウイルスなどならキーワードで見分けることが簡単なのですが、がん細胞は自分の細胞なので見分けることが出来ないのです。
もはや、打つ手無しか。

そんな時に登場したのが抗がん剤です。
がんは、やたらと増殖するという特徴があります。
抗がん剤は、その特徴を活かしたのです。

抗がん剤は、細胞分裂の邪魔をすることで働きます。
途中まで進んだ細胞分裂は、中断されるとエラーとして見分けられ処分されます。
これを利用して、がん細胞を処理するのです。
この流れは、がん細胞だけでなく正常な細胞にも働いてしまいます。
だから、危険と言われるのです。
しかし、がん細胞の方が分裂が盛んなので、がん細胞の方が多く減ります。
それにより、がん細胞の絶対数を減らすことが出来るのです。
そして、この絶対数を減らすことこそが、とても大事なのです。
1個の細胞が2個に分裂。
その2個の細胞がそれぞれ分裂して4個に。
4個が8個に。
8個が16個に。
仮に、免疫に邪魔されず1日に1回の分裂で倍々していくと、わずか30日で画像で診断される1cm、10億個の数に達してしまうのです。
そしてこの分裂は後半になると爆発的に数が増えます。
問題なのが、免疫が1日で処理出来るがん細胞の数に限りがあると言うとことです。
1日に免疫が処理出来る数より、増殖するがん細胞の数が上回った時点で死は避けられないものとなります。
だから、抗がん剤が大事なのです。
抗がん剤で全てのがん細胞を駆逐するのではありません。
抗がん剤で絶対数を減らして、免疫の手伝いをさせるのです。
もちろん、正常な細胞にも被害が出るので、医師と副作用の症状を確認しあいながら、休み休みでも抗がん剤を続けることが大事になります。
1クールといった言い方をされますが、そのクール全てをやらなければ意味がないわけではありません。
1回でもやれば、それによって処理されるがん細胞があるのです。
そして、確実に数は減るのです。
だから、少しずつでも続けてください。
酷くなってからだと抗がん剤が使用出来ないこともあります。
今は化学が進歩して、この抗がん剤は細胞分裂のここに作用する、この抗がん剤はここに、と分子レベルで解明されています。
分子標的薬や光免疫療法にも期待がかかりますが、今既にがんと闘ってる人には間に合わないので抗がん剤は必要だと思います。

私達の何倍も努力して勉強してる研究者によって導き出されたのが、抗がん剤をはじめとする標準医療です。
そして、この抗がん剤のスペシャリストが腫瘍内科医です。
 2人に1人ががんになると言われているストレス社会、万が一がんになってしまったら、ぜひ腫瘍内科のある病院を調べて行ってください。

抗がん剤の否定は自由です。
でも、何の勉強もしてない素人がイメージから受ける印象だけで、ろくに自身で考察もせずにSNS等で拡散するのはいかがなものでしょうか。
その考察不足な投稿を信じてしまい、助かる命が助からないこともあることを認識して欲しいものです。