2020/03/26

抗がん剤を怖がる方へ

以前、FBで上げたものなのですが、埋もれさせるのは勿体ないので治療院のコラムに再投稿しました。
抗がん剤に関するコラムになります。

ゴミみたいな記事が出回りまくってるので、生化学オタクとして抗がん剤を薦める理由を書いてみました。
まずは、がんを超〜わかり易く説明してみたいと思います。

がん細胞は、外から入って来たウイルスや菌ではなくて完全に自分の細胞です。
簡単に言ってしまえば、仕事をしない自分の細胞です。
厄介なことに、その細胞は仕事をしない上にやたらと増殖するのです。
会社に一人二人仕事しない人がいても何とかなるかも知れません。
しかし、その仕事をしない人が「この会社楽だよ」と仕事をしない人ばかり連れて来てしまい、会社が仕事しない人だらけになってしまったらどうなるでしょうか。
会社は潰れますよね。
がんは、これと一緒です。

しかし、人間の身体の中には、免疫という監査役がいて、きっちり見張って処理してくれているはずなのですが、ストレス等で免疫が低下すると、この監査役が働けないのです。
そのせいで、どんどん仕事をしない細胞(人)ばかりが増えて臓器(会社)本来の機能が停止して死(倒産)に至るのです。

そんな免疫が働きづらいストレス社会でがんと戦うには、やはり薬に頼るしかありません。
薬には我々のように目がないので、ターゲットを認識するキーワードのようなものが必要になります。
標的が自分の細胞ではないウイルスなどならキーワードで見分けることが簡単なのですが、がん細胞は自分の細胞なので見分けることが出来ないのです。
もはや、打つ手無しか。

そんな時に登場したのが抗がん剤です。
がんは、やたらと増殖するという特徴があります。
抗がん剤は、その特徴を活かしたのです。

抗がん剤は、細胞分裂の邪魔をすることで働きます。
途中まで進んだ細胞分裂は、中断されるとエラーとして見分けられ処分されます。
これを利用して、がん細胞を処理するのです。
この流れは、がん細胞だけでなく正常な細胞にも働いてしまいます。
だから、危険と言われるのです。
しかし、がん細胞の方が分裂が盛んなので、がん細胞の方が多く減ります。
それにより、がん細胞の絶対数を減らすことが出来るのです。
そして、この絶対数を減らすことこそが、とても大事なのです。
1個の細胞が2個に分裂。
その2個の細胞がそれぞれ分裂して4個に。
4個が8個に。
8個が16個に。
仮に、免疫に邪魔されず1日に1回の分裂で倍々していくと、わずか30日で画像で診断される1cm、10億個の数に達してしまうのです。
そしてこの分裂は後半になると爆発的に数が増えます。
問題なのが、免疫が1日で処理出来るがん細胞の数に限りがあると言うとことです。
1日に免疫が処理出来る数より、増殖するがん細胞の数が上回った時点で死は避けられないものとなります。
だから、抗がん剤が大事なのです。
抗がん剤で全てのがん細胞を駆逐するのではありません。
抗がん剤で絶対数を減らして、免疫の手伝いをさせるのです。
もちろん、正常な細胞にも被害が出るので、医師と副作用の症状を確認しあいながら、休み休みでも抗がん剤を続けることが大事になります。
1クールといった言い方をされますが、そのクール全てをやらなければ意味がないわけではありません。
1回でもやれば、それによって処理されるがん細胞があるのです。
そして、確実に数は減るのです。
だから、少しずつでも続けてください。
酷くなってからだと抗がん剤が使用出来ないこともあります。
今は化学が進歩して、この抗がん剤は細胞分裂のここに作用する、この抗がん剤はここに、と分子レベルで解明されています。
分子標的薬や光免疫療法にも期待がかかりますが、今既にがんと闘ってる人には間に合わないので抗がん剤は必要だと思います。

私達の何倍も努力して勉強してる研究者によって導き出されたのが、抗がん剤をはじめとする標準医療です。
そして、この抗がん剤のスペシャリストが腫瘍内科医です。
 2人に1人ががんになると言われているストレス社会、万が一がんになってしまったら、ぜひ腫瘍内科のある病院を調べて行ってください。

抗がん剤の否定は自由です。
でも、何の勉強もしてない素人がイメージから受ける印象だけで、ろくに自身で考察もせずにSNS等で拡散するのはいかがなものでしょうか。
その考察不足な投稿を信じてしまい、助かる命が助からないこともあることを認識して欲しいものです。


0 件のコメント:

コメントを投稿