2016/12/12

起因と過程

健康ブームが一過性のものから日常的なものになり多くの雑学が出回っている。

何を信じるかは人それぞれ自由なので構わない。

しかし、せめて当院の患者さんには正しい知識を知って欲しい。

一回の来院で色々な話をしても、知識として持って帰れるものは意外と少ない。

ほとんどの人が、後から何だっけと忘れてしまう。

そんな時は、私が書いて来たコラムを参考にして欲しい。

内容は全て、その時の医学に準拠した内容になっている。

人の体で何か反応が起きるとき、そこには必ず起因(スイッチ)と過程(プロセス)が存在する。

これが無いということは、医学的根拠が無いということだ。

どんなものにも存在する。

例えば…

「ケガをして痛い。」

このごく日常に起こる反応の中にも起因と過程が存在する。

通常、ケガをすると組織、細胞が破壊される。

このとき、血漿内でプレカリクレインが、血管内皮の損傷で活性化されたハーゲマン因子によってカリクレインとなる。

カリクレインが、キニノーゲン(α2グロブリン分画)のペプチド結合を加水分解してブラジキニン(発痛物質)を作る。

同時に、破壊された細胞の膜を構成していたリン脂質がアラキドン酸カスケードを経て、プロスタグランジンE2(発痛助物質)になる。

これらが、侵害受容器(痛みの神経)に作用し、活動電位が発生。

神経を上行して脳が痛みを受容する。

一般の人は、「ケガをして」というスタートと「痛い」というゴールだけを見ているが、我々プロは、常にその間を見ている。





<補足>
アラキドン酸カスケード
リン脂質にエステル結合しているアラキドン酸がホスホリパーゼA2(PLA2)によって遊離され、シクロオキシゲナーゼ(COX)より代謝され、プロスタグランジンG2、プロスタグランジンH2へと変わる。
そして、プロスタグランジンE合成酵素(PGES)に代謝されプロスタグランジンE2へと変わる。





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