2018/01/30

電子伝達系

解糖系、クエン酸回路と来たので、電子伝達系をまとめてみました。
ATP合成の基盤となる部分であり、個人的には理解すると生化学がとても楽しくなる部分だと思います。

電子は、クエン酸回路の基質を始まりとして、NADHやFADH2を経て、複合体やユビキノン(Q)、シトクロムc(Cytc)を通ってミトコンドリア内膜の中を伝達されて行き、最後は酸素に伝達され水となります。
プロトンは、それぞれの複合体でミトコンドリアの膜間腔にくみ出され、濃度が高くなると内膜にあるATP合成酵素を通ってマトリックスに流れ込みます。
この際のエネルギーを利用して大量のATPが合成されるのです。

電子の流れを簡単に書くと、
複合体Ⅰ・Ⅱ→ユビキノン→複合体Ⅲ→シトクロムc→複合体Ⅳ→O2

ちなみに電子が移動する原動力としては、電子は還元電位が大きい方に流れて行くという性質があります。
それでは、1つずつ細かく見て行きましょう。

複合体Ⅰ
クエン酸回路で生じたNADHは複合体ⅠでFMNにH-(H+と電子e-2で構成)を渡します。
さらにFMNはマトリックスからH+も取り込んでFMNH2になります。
このあとFMNH2はFe-Sクラスターに電子を渡します。
複合体ⅠにはFe-Sクラスターが、7〜8個あります。
これを飛び移って行き最後に、複合体Ⅰに付着しているユビキノン(Q)に渡されるのです。
電子が複合体Ⅰ内を移動中、マトリックスから2H+が吸収され、膜間腔には計4つのH+が放出されます。
ユビキノンはFe-Sクラスターから2個の電子e-を受け取ると、マトリックスからも2H+を吸収してQH2になりミトコンドリア内膜の中を拡散して行きます。
これにより、NADH→QH2の間に、
マトリックスから+5H
膜間腔へ+4H
計9H分の濃度勾配が出来ます。

複合体Ⅱ
複合体Ⅱは、クエン酸回路のコハク酸脱水素酵素です。
コハク酸から電子2個とH+2個がFADに渡り、FADはFADH2になります。
FADH2は電子を1個ずつ2回Fe-Sクラスターに渡し、H+を2個マトリックスに放出してFADに戻ります。
電子は3個のFe-Sクラスターを移動し、ユビキノンに伝達されます。
ユビキノンは2個の電子と、マトリックスから2H+を取り込んでユビキノール(QH2)になり、内膜の中を拡散して行きます。

複合体Ⅲ
QH2は複合体Ⅲに出会うとQH2サイトに結合し、運んでいた電子2個のうちの1つをFe-Sクラスターに、もう1つをシトクロムbが持つヘムb566に渡します。
電子を失ってQH2から遊離した2H+は膜間腔に放出されます。
そしてQH2はQになりQサイトに移ります。
そして、Fe-Sクラスターに渡された電子はシトクロムc1を経て、膜間腔側の表面に結合しているシトクロムcに渡されます。
電子を受け取ったシトクロムcは酸化型から還元型になり複合体Ⅲから遊離します。
一方、ヘムb566に渡された電子は、ヘムb562を経てQサイトに結合したQに渡されます。
Q-になった後、次のQH2のやりとりを待ち、再び電子を得たQ-はマトリックスから2H+も得てQH2になって内膜内に出て行きます。
まとめると、
2分子のQH2が来て、1分子のQH2と1分子のQ、さらに2分子の還元型シトクロムcが生じます。
その間に、
マトリックスから+2H+
膜間腔へ+4H+
計6H+分の濃度勾配が出来ます。
(もとの1分子のNADHあたり3h+の濃度勾配)

複合体Ⅳ
複合体Ⅳでは、膜間腔を移動して来た還元型シトクロムcから電子が1個ずつ4回供給され、マトリックスからプロトンが4つ取り込まれます。
シトクロムcは電子を渡すことで酸化型シトクロムcに戻り複合体Ⅳから離れて行きます。
複合体Ⅳに結合した電子は、還元型シトクロムcから複合体Ⅳの銅イオンに飛び移ります。
その後、ヘムα、ヘムα3、ヘムα3内の銅イオンへと飛び移ります。
最後にヘムα3と銅イオンの間に結合しているO2に移ります。
まず、最初の電子2個でヘムα3の鉄原子Feと銅原子Cuがそれぞれ還元され酸素分子が結合出来るようになります。
酸素分子O2は還元されたヘムα3のFeとCuの両方から結合電子を受け取りFe-O-O-Cuになります。
その後、酸素分子は還元型シトクロムcから電子をさらに2個受け取り、マトリックスからのH+2個と結合し、Fe-OH HO-Cuになります。
最後にまたH+が2個取り込まれ2H2Oが生成され膜から出て行きます。
そして水分子がなくなったFeとCuは初期の状態に戻ります。
この過程において、機構は未解明ですが別途で4個のH+がマトリックスから取り込まれ、4個のH+が膜間腔に放出されます。
よって、1分子のO2から2分子の水が作られる過程においては、
マトリックスから+8H+
膜間腔へ+4H+
計12H+分の濃度勾配が出来きます。
(もとの1分子のNADHあたり3h+の濃度勾配)

こうして出来たプロトンの濃度勾配によって、ミトコンドリア内膜内のATP合成酵素のモーターが回りATPが生成されるのです。
次回は、ATP合成酵素やATP生成量についてまとめたいと思います。





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